2010/04/06

京王フローラルガーデン3


 前回このフローラルガーデンへ来た時のブログには、「この寒々とした時期にこそ、しっかり準備しておかなければならないのであろう。スタッフは、あちこちで忙しそうに木々の手入れに余念がない」と残している。だから、もうそろそろ、その成果が出始めた頃ではないかと思って足を運んだのである。片道38分歩いて来て、休まず園内を歩き5カット撮影して、すぐさま再び帰路に着く。園内には十数分しか滞在していないが、ストップウォッチで締めて1時間39分である。実は、それ以上撮影に時間を掛けても、結果は変わらないし、途中で休憩を取ってしまうと意欲も薄れてしまうからだ。少々体力的にきつい条件とかロケーションの悪い方が頭をよく使うし、その工夫が結果的には自分の納得感に繋がるわけである。仮に、それでも不満が残るようなら、「撮影しない時にこそ、しっかり準備して道具の手入れをしながら、撮影イメージでも膨らませておいたほうが良い」と思う。そういう意味では、まさに造園作業と似ているかもしれない。

 造園作業については、私には分からないので、写真を撮る側から推察すると、どちらも最終的な結果がイメージできていなければならない筈である。そのイメージを実現するために、今日も地道に努力することになる。造園にも写真にも、たまたま条件がよくて良い結果が得られることもある。しかし、継続してよい結果を出そうとすると、本質的なことが分からないと良い段取りが取れない。まさに、行き当たりばったりになる。しかし、何度も同じ事を繰り返すことで少しずつ本質が見えてくる。最初は曖昧模糊として捉えていても、経験を重ねると自然に感覚として身に付いてくるものである。それが、頭の中で統計的処理が行われ、幾つかに分類され、更にそれらが階層化され、繰り返すことによって状況がさらに細分化されて、状況ごとのシナリオが出来上がるのである。そして、また、出来上がったものをよく分析する事も重要である。普通、失敗した時には何故失敗したかを考えるが、それだけでは十分ではない。成功した時も何故成功できたかを分析する必要がある。この2つをバランスよく整理して誰にでも説明できるようになると、セオリーが分かってくるし、不意な失敗要素といえる自分の弱点も見えてくる筈だ。その自分の弱点こそが重要な鍵になることがある。
 道具つまり、ここからはカメラをさすが、できるだけ単純な構造の物が良い。それは、撮影時に細かいところまで気を配り、自分なりに理屈を組み立てて工夫をするからである。今、置かれた状況を把握し、色温度、感度、画角、絞り、シャッター速度、全て自分で何とかしなければならないと思った時にこそ、面白みが出るのである。そして、数多くを経験することで「自分に足りない能力、あるいは不足している知識が何であるかも自覚する」ことができる。それを1つ1つ解決して明日に臨むから、長続きするという理屈になる。そういう意味で、今まで、このブログに掲載してきた写真は、「全て練習結果」と言ってよい。それは、自分の弱点が分かっていて、「次の写真は間違いなく良くなる」という根拠を明確に把握しているからである。

 不用意な失敗も経験する。大昔、仕事で初めて写真を撮らなきゃいけなかった時、ニコンF(露出計のないカメラ)で、先輩方から、「シャッターを切れば写るから」と励まされた。「まいったなあ、撮り直しが効かない取材で、そんな恐ろしい事を言われるなんて」とビビって出掛けた事を思い出すが、その時は、緊張感が漲っていたので失敗とまでも言えず、何とか現像で助けてもらったが、失敗は意外にも、そのずっと先の経験をつんだ頃不意に襲ってくる。なぜか経験も積み上げたのに、「余裕をかましている時とか、被写体をなめている時」に発生するのである。それは、フイルムが巻き上がっていなかった、とか、動く物を撮影するのにSSを持ってきたとか、緊張感のない時に起こしてしまうのである。そんな基本的な失敗は、1度でもすれば懲りるし悔いが残る。そして、それは失敗せずに今日まで来た時ほど危ういと思う、それもセオリーと言ってよい。現代のカメラに当てはめると、状況分析をせずに、何でもAUTO に頼って撮ると、35%ぐらいは失敗作、50%は中途半端な結果になるのと同じである。

 さて、話を本題に戻すと、今日の写真は、このフローラルガーデンで、早くからたくさんのつぼみを蓄える樹で、日本では木蓮と言われているが、ここでは、マグノリア系の「さよなら」というらしい。といっても、私は認識がなかったが、幹に「さよなら」と書いたプレートが巻きつけられていた。細い枝にすずなりに実った、大きなつぼみが溢れる様子に圧倒され、のどかさ中にも迫力を感じる。つぼみは、徐々に開き最大180度まで開くが、今は、根元にやや赤みを帯びて、遠くからでも丸みを感じる。 ここが美しいが、花自体のクローズアップ写真は、何処にでも載っているので、ここでは、持ち味の「迫力と立体感」を失わないように、全体を縦位置で捕らえた。大地に植えてある水仙の花がそれを囲む。そんな造園者の気持ちを伝えたい感じである。そこで、今日の話をまとめると、例えばこの写真が、このフローラルガーデンの造園者であるスタッフのイメージに一致していたら良い写真と言えるかもしれない。 どうかな。
ではこちら
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