日本でグループサウンズが流行したのは、紛れも無く、海の向こうのビートルズの影響だが、元々ギターの数少ない弦を使って作曲すると、単純なコード進行で、素人でも親しみやすい曲になる。おまけに、エレキサウンドは、音量の大きさと響きに特徴があり、重低音も出るので、体で感じる音楽と言っても良く、ライブじゃなきゃ面白くないと言うファンは多かった。ただ、残念なことに、グループサウンズの時代は長く続かなかった。メンバーは、演奏技術にはめっぽう強いが、作詞、そして歌唱力に脆弱なところがあったためだ。だから、作曲と演奏を重点的にフィーチャーしていけば、もう少し長続き出来たかもしれない。
そこで今日は、グループサウンズのエレキに女性ボーカルを組み合わせた歌謡曲を思い出してみたい。そこには、昭和の流行歌を振り返る別の風景があったともいえる。その代表格が、何といってもベンチャーズと奥村チヨ(当時20歳)の「北国の青い空(1967年)」、そして渚ゆう子(当時25歳)の「京都の恋(1970年)、京都慕情、長崎慕情」、である。そうそう、奥村チヨさんと言うと「ごめんネ・・・ジロー」に始まり、恋泥棒、恋の奴隷、恋狂い、中途半端はやめて、悔しいけれど幸せよ・・の恋シリーズとは一線を画す曲調だが、二人ともベンチャーズと組んだ曲は、群を抜いて完成度が高い。
実は、この二人の曲は、何曲かマスターテープのコピー(2TR38)を持っていた。いずれも、ボーカルありと、なしのカラオケも記録してあって、当時としては物凄い重低音が入っていたのに驚いたが、一昨日取り寄せたこの2枚のCDは、そのあたりの処理も含めて綺麗に修正されていたが、それでもやはりあの、地を這うような重低音は圧巻で、2TR38テープよりCDの方が、もたつきのないすっきりした音作りになっている。ご自分の装置の低音域に不満のある方は、これらのCDを用意されたい。不満は一挙に解消するはずだ。二人とも、いわずと知れた東芝EMIの所属でCD番号は 渚ゆう子 ゴールデンベスト TOCT10879 定価1,980円 奥村チヨ ゴールデンベスト TOCT10878 定価1,980円 となっている。
このゴールデン・ベストの良さは、シングル・レコードを集めたような選曲で、間違いなく流行した曲が入っているところにあるが、一方で、タイトルだけでは、すっかり忘れていたと思えるような曲を聞きながら、「あーっ、この曲かあー」と思い出せる点にもある。 また、よく知っていると思っていながら、実際に耳にすると、一際懐かしく感じる曲もある。たとえば、「ごめんネ・・・ジロー」が流れてきた瞬間、1965年の流行歌なので、丁度私は中学時代で、クラブ活動の後、学校の校門を出て左側のうどん屋で「うどんを食べている情景」を思い出してしまった。それだけではない、友達どおしで互いに謝るときは、必ず「ごめんネ・・・○○○ー」とよく言ったものだ。もうここまで来ると、懐かしがっている場合ではない。讃岐うどんを無性に食べたくなり、高松へ遊びに行きたくなってしまった。
渚ゆう子さんは、ハスキーな歌声だけでも魅力的で商品価値は高いが、演歌やハワイアンも大変上手であり、演歌からポップスまでシームレスにこなす技巧派といえる。京都のイメージが強いが沖縄出身の方である。最近、珍しくテレビで当時の曲を聴かせてもらったが、やはり重低音がないと、あのハスキーな声が全くつまらなく聴こえてしまう。やはりレコードを聴いた方が良い。奥村チヨさんは、一般的に恋シリーズの印象が強く、甘えたような歌い方というのが、もっぱら定着しているかもしれないが、あのような歌い方はレコードの販売戦略そのもので、本来は音域が広く、音程がしっかりしているのが特徴。この「北国の青い空、終着駅」では、その歌唱力を存分に発揮している。また、どちらかと言えば、外見からは「北とか、寒い」とか「冷たい」のイメージが強いが、現在でも通用するお化粧スタイルを当時から実践し、今でも若い女性からの支持も厚い。案外先進的で楽しい人のようだ。 余計なことだが、お二人とも、私より年齢は6~8年ほど先輩である。
ではこちら
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