人は、どんなに美しい対象や風景でも、見慣れると飽きてくるし、同じパターンで分類できるものは、それに心を踊らされる時間は短くなる。また、他の人も自分と同じ画角や目線で、同じ様に対象物を見ている筈だ、と勝手に想像してすぐに飽きる。その2つだけ取り上げても、大脳は物の見え方に、かなり身勝手な振る舞いをしていることがわかる。だから、その大脳の振る舞いをそのまま受け取っていては、その対象となる物の美しさを見逃してしまいそうになる。だから、時折、大脳の性質を覆すように、新たな視点を展開するか、リセットして初心に戻る必要がある。
本来、新たな視点の展開は様々な場面で役立つが、それが、こと写真撮影には重要な働きになることがある。まず、その1つとして、今の目線でフレームワークを決めてはいけない。これは、自分の視界で見えているものが全てだと考えないようにするためである。「大脳は、観たものを、すぐに大雑把に記憶しようとする。そして、頭の中で立体的な対象として認識を深めようとする。」 これが、実は新たな視点の開拓の邪魔をしているのである。たとえば、見慣れた認識の強い風景は、本来その風景の魅力とは裏腹に、それを絡めた構図に大脳がすぐに飽きるので、思考を中断あるいは撮影を停止する可能性が高い。そこで、そのような認識の強い風景こそ再考をすることで、魅力ある写真になる可能性が高いのである。
さて、屁理屈はこのくらいにして、今日は、フローラルガーデンのボンドガーデンにある、ベルサイユ宮殿の「愛の神殿」をモチーフにしたというドームを撮影してみた。あまり露骨にドーム全体を表面化せず、いくらか想像してもらった方がよいと思い、やや背後から狙ったようなフレームになっている。ここが再考の結果である。また、ドームの水周りを画面の中央水平線上に置くことで、縦の柱の線を強調して構造物としての美しさを出した。 また、床と天井の両方が見える高さで、水面に明るさが反射して写り込む位置までさがって撮影し、暗部のコントラストを強調した。
このボンドガーデン一帯と池の周囲は、ドームを中心として、このフローラルガーデンの最も象徴的な空間だと考えられる。そこで、幾度か周囲を重点的に撮影してみたいと思う。前回の紫のヘリオトロープ、赤と黄色のガイラルディア も、この写真では池の向こう側の、さらに右奥で撮影している。この時の撮影には、ドットピッチ6.4ミクロンタイプのカメラを使用して、柔らかさの中に精細度を重視したが、今回のようなロケーションでは、ドットピッチ8.8ミクロンタイプのカメラを使用し緑色の再現性と色のダイナミックレンジを確保している。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%21714&app=WordPdf
補足 ドットピッチ 表示パネルや受光素子の3色フィルタ間の距離のこと。ここでは、35mm版CMOS受光素子のドットピッチのことで、受光面積が同じでドットピッチが小さければ高解像度、大きければワイドダイナミックレンジとなる。実際に撮影比較でも画質の差は顕著で、それぞれ得意と不得意があり、被写体による使い分けには必然性がある。