先月のアサヒカメラに「解像力は写真力か?」というタイトルの記事を見付けた。なるほど日本人は何かに付けて解像力を求める傾向が強いということなのだろうか。確かに、解像力は高いにこしたことは無いのだが、そのために他の性能が犠牲になっているとしたら、どちらがよいか考え物である。ただ、犠牲になっていることは、あえて隠し、誰も説明したがらないから、漠然としか議論されなくなるのだろう。先日、知り合いの集まりで EOS kiss X3(1,500万画素)を持った若者がいたので、「いいのを持ってますね」と声をかけたら、「これを買った後すぐにX4(1,800万画素)が出て、凄く残念です」と悔しがっていた。やはり御本人は、解像度重視だったようだ。
日本光学のFX(35mm相当)フォーマットのカメラには、高解像度のタイプと、高感度のタイプの2種類のカメラが用意されている。1種類では互いに補完できない領域を担当しているので、撮影範囲や条件によって選択使用することになる。これは、両者が1台に統合できないことを明示しながらも、デジタルの優位性である、ナイキスト周波数までは「高いレスポンス」が得られるとか、瞬時に画質に影響を与えずに「ノイズを低減させる」等の優位性を、さらに推し進めてきた結果と言えそうだ。つまり、理論的な矛盾を抱えながら、製造技術で妥協するのは、画質的にも、商品戦略的にも良い結果には成り得ないとしたのであろう。個人的にも、この2種類の性質を1台のカメラに統合するには、「写真の質」においては多少無理があると考えてきた。
その、画質要素の1つが、いつも問題にする色のダイナミックレンジである。一般的に一口で色再現性とか言われる事も多いのだが、被写体に対して、絞りを閉じた後、徐々に開けてゆくと、まず最初は少し色が濃い目に出て、さらに開くと徐々に色が明るく変化し、最後はとぶようになる。この操作をすれば、ガンマ曲線の立ち上がり特性や、基本的な色再現、ハイライトの強み・弱みが簡単に分かるが、その画像の色変化が気に食わない事が多いのである。だから、状況にあわせてドットピッチの異なる3種のカメラ(レンズは同じ)から、状況に適した本体を選んで使うことになるのである。これは撮影者にとっても負担である。単板式の眼界だと納得はしているものの、木の葉や、草の緑色でがっかりする事が多い。特に今頃の季節は、その様な部分が気になるのである。見慣れた木々の緑は誰が見ても分かるだろうし、一方で出版物にもその様な違和感のある色調を多々見かけて、カメラ雑誌での質の悪い写真の公開はいかがな物か、とそう懐疑心を強めている。だから、自分もこの時期の神代植物園やアンジェでの撮影は、特別に神経を使うわけである。
さて、そろそろ日本列島は梅雨明けまじか のようだが、まだ、時々暗雲もあって写真としては、スカッとした感じにはならないが、それはそれで季節感と諦めて撮影を続けてみたい。今日は、前回より少し手前に引いた場所で、目の前の池に重点の置いている。緑が映えるように、暗い場所から明るい方角に画角を向けているので、独特の緑のグラデーションである。今回も、ドットピッチ8.8μタイプを使用して、色を重視しているつもりで、ドットピッチ6.4μタイプよりはよいと思うが、それでも、何か一寸違うんだなとも思うのであった。ただ、このPDF変換では、解像力が低下し、色再現もやや劣るようになるので、PDFとしては限界かもしれない。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%21727&app=WordPdf
補足 ナイキスト周波数 ディジタル信号で変換可能な限界周波数のこと。殆どのデジタルカメラは、この限界周波数を越えた周波数を遮断するために、光学的なLPFを受光素子の前面に備えている。このナイキスト周波数における遮断特性が悪いと偽信号が発生する。遮断特性が早めにかかると解像力の無い甘い画像になる。
光学的なLPF 特定の空間周波数以上を遮断するフィルタのこと。この材料には、「SAWフィルタ等に使われるニオブ゙酸リチウム」と「水晶」があり、ニオブ酸リチウム(=LiNbO3 LNと略される)の複屈折は水晶の10倍あり、LPFの厚みを薄くできる特徴があるため遮断特性も良好で、高価なプロ用一眼カメラに使われている。