井村屋の「茹あずき」の缶詰を使って、俺流の水羊羹を作る事がある。井村屋の茹あずきはよく粒が揃っているし、勿論それだけでも加糖されているので、さっぱりしたあんことしていただけるが、アルカリイオン水を加えながら、1/3ぐらい小豆を潰して、寒天と共に火に掛ける。寒天が溶けて沸騰したら、弁当箱のような四角い容器に流し込んでさまし、さらに冷蔵庫で冷やす。
数時間後、忘れた頃に取り出して、切って食べるわけである。その断面が実に美しく、一番下には、石垣のように積まれた大粒の小豆、その上は小豆の中身がこしあんのようになって沈殿し、上の方は徐々に透明感を増すのである。表面のテカっとした光沢も一際美しい。この俺流水羊羹は、人に「どうよ」って食べさせる物でもないし、決して自慢するような作り方(早い話邪道)でもないが、昔、母が作ってくれた水羊羹とほぼ同じ食感と味になるので自分では好物になっていて、時たま気が向いた時に「よしよし、じゃ」と作るわけである。今ごろの季節には、必ず口にしたいと思う逸品なのである。
井村屋は私にとって、幼い頃、そう50年以上前になるけれど、親しみの強い会社で、即席のジュースの素(粉末)を販売していた。「ホホイのホイでもう一杯、井村屋のジュースの素ですもう一杯」というようなCMソングをいまだに覚えているぐらいで、私にとって大好きな甘味の会社なのである。当時、まだまだ食糧事情は今のような豊かさは無く、ジュースの素といっても、恐らく、あくまでも恐らくだけど、赤と黄色の色素とクエン酸と砂糖のような物で作られていて、A4程度の大きなビニール袋に詰めて販売されていたと記憶している。それをスプーンですくってコップに入れて、水を加えて「ジュース」としていたのである。まあ、それでも、よく、そのままスプーンで口に運んでいた記憶もある。舌が朱色になってしまうので、すぐにバレて、母によく叱られた。「えへへ」って感じである。
既に、東京に住むようになってもう40年近い。いつしか東京の味の「くどさ」にも慣れてしまったようだ。そんな田舎出身の私にとって、水羊羹の決定版といえば、やはりここの商品を外すことは出来ない。全国的にも広く知られていて、大した金額でもないのに、この季節、何処へ持って行っても、年配の方々はニコニコしながら 「まあ、まあ!立派な物を」 って喜ばれるのである。それほど年配の人達に喜ばれると、「やっぱ美味しいんだ」と思うようになる。俺流の寒天羊羹とは対極にあるものだが、最近になって、このくどさも魅力の1つと感じることもある。やっと俺もこの味が分かるようになったのか、あるいは東京風に流されたのだろうか、暑いと、思い出したように買って帰る時がある。ちと甘すぎるけど、確かに美味しい。
ではこちら
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補足 紹介している四種類の水羊羹には、幾つかの糖類が使われている。黒糖と和三盆糖、その他の甘味の違いがすぐに分かるようになれば、一人前である。大人になると、その甘味の違いを原材料はもとより、製造方法の違いとして話が出来なければならない。
写真ではわかりにくいが、1つ1つの容器が逆台形の断面をしており、実物1個はかなり小さく70gしかないので、2~3個は軽くいけると思うが、何と1個160kcalである。