本来の「国産松茸」を使って作ると松茸御飯は高価なものになってしまう。また、炊き込み御飯の1つでしかない松茸御飯はそのコストを照らし合わせた時に、素直に庶民が美味しいと言えるものではなくなった。さらに、松茸は「採れたてが一番芳しく、2日が保存限度」と賞味期限は短い。それ以降は、どんどん品質が低下する。これを念頭に置いて、デパートで松茸の実物を眺めてもらいたい。そこで、それを手にする価値を見出すのは難しいと思う。つまり、店頭展示されている松茸は、今や「店の品格を誇示する」象徴であり、まれに、価値を見抜けない富裕層がふらっと買って帰るぐらいである。それでも、備長炭のひちりんに乗せてみると、最後の良い薫りが出る。そして、それを裂いて食べる。ま、視点を変えると、究極のダイエット食品でもある。形の悪い物はスライスして、御飯と、醤油、出し汁、日本酒などと一緒に炊き込んで、松茸御飯にする。それでも、相変わらず国産を使う限り「美味しさ対コスト」の関係は悪いままである。したがって、現代においては、松茸御飯としては、最初からアプローチ方法を考え直した方が良いことになる。
またまた50年ぐらい前の話になるけれど、母の実家は材木屋だったので、多くの山を所有していた。その中に、いくつか松茸が取れる山があって、当時は、秋口になると親戚一同が集まり、その随分奥地にある山まで松茸狩りに行ったのである。年によっては、不作の山もあって、山を変えないといけない状況もあった。松茸は乾燥した落ち葉の下にいて、子供の私でもコツさえ覚えれば面白いように採れた。そして、その場でひちりんの火に焙って醤油を掛けていただくのである。この作法は、一番美味しい食べ方である。大人は、松茸の焼ける香ばしい薫りの中で、日本酒を呑んで騒いでいた。残った松茸は、木の箱2つ分ぐらいを持って帰り、近所に配ったり、夜は松茸御飯になったのである。当時私は、そのような松茸を使った料理を大して美味しいと思わなかった。
それでは、なぜ、松茸が高額になってしまったのだろうか。まず、基本的に天然モノしかないからである。秋口のこの時期しか採れないし、松茸が生える山自体は元々少ないのである。さらに、人が分け入る事が難しいような山が多く、しかも、その年の天候や雨の量にも影響を受けると言われている。さらに、松茸の生えてくる場所を探して歩く労力を惜しまない、いわゆる「松茸採りの名人」が少なくなったことも挙げられる。今や、国内では、それ自体で儲けを出すことはおろか、採取を楽しみにすることすら難しいのである。つまり、山の土地柄を熟知していて、労力を惜しまず歩き回る割には、成果を出しにくいというのが現実である。この悪循環が松茸の商品化を先細りにして来たようだ。今やこのことは、山へ分け入る日本の名人のみならず、中国でも、カナダ、アメリカでも同じだと思われる。
そこで、今日は「奥信濃の味麓庵」の松茸ごはんの素で、松茸御飯を作ってみることにしたい。本物をすぐに裂いて炊き込むのと違い、だしや醤油に漬け込んである薄い松茸のスライスを一緒に炊き込む。これで薫りと出し汁による僅かな松茸の薫りを楽しむのである。この松茸御飯の調理は、極めて簡単である。お米2合をといで、そこに本品を液ごと入れる(本品は、松茸のスライスを薄い醤油、調味料などに漬け込んだ状態でパックされている)。そして、本来の2合炊きの水加減まで水を加える。あとは、炊飯するだけである。出来上がったものは、お釜の中に少しおこげが出来て、なかなか美味しい。勿論、松茸も上品に薫るので楽しめると思う。勿論そのまま戴くのもよし、お弁当やおにぎりにも丁度良い加減である。また、本品自体は酒蒸し、土瓶蒸しの材料にもよいと書かれている。使われている松茸の産地は、製造元の長野ではなく中国と書いてあった。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%21806&app=WordPdf
補足 国産の松茸が良いという人は多い。これは薫の良い、優れた松茸を採取できる人が多かった為だと言われている。また、松茸が採れるのは、あかまつの下が多いと言われている。輸入品は、必ずしもこの限りではない。中国産、カナダ産、アメリカ産には、それぞれ微妙に違いがある。国産と同じ物を見分けるために、DNA検査を使った識別法が用いられている。