2010/10/01

一枚流し水羊羹

 夏場の炎天下のトレーニング・コースは、先日紹介したFUJI FILMのフォト・ギャラリーの前を通って、杏林大学病院を抜け、三鷹の森 シブリ美術館を横目に、井の頭公園から吉祥寺に抜けるコースを使ってきた。もちろん休息のないウォーキングである。7~8月は、どうしても往復166分ぐらい掛かっていたが、9月中旬からは、暑さが少し遠のいたせいか往復144分以下で行けるようになった。涼しいと体力の消耗も随分抑えられるようで快適である。杏林大学病院を過ぎると吉祥寺までは「吉祥寺通り」を進む。慣れるとわき道などを探し、日増しに増える自転車から離れて歩きたい。

 ところで、新しいルートに挑戦すると、街並みのお店が気になったり、ルートに慣れると店の暖簾をくぐってみたくなる。それ自体も楽しみなのだ。いや、むしろ、新たなお店を探すためにトレーニングコースを開発していると言ってもよい。お洒落な喫茶店、腰の強い蕎麦屋、懐かしい味の洋食屋、大納言が活きてる和菓子店、生クリームに拘る洋菓子店、など店舗の雰囲気にも興味を魅かれれば覗いてみたくなるのである。最近は、何処もお客の数が少ないので、お食事処は準備時間が長くなっているし店じまいも早い。販売店は品物の数が少なかったりして、やや疲弊感が漂よう傾向がある。シャッターが下りているお店も多い。しかし、やはり外から見ても周囲が綺麗に整備されていたり、掃除や水撒きが行き届いていると、店内にも活気が漂っているようだ。

  今日は、少々季節を外してしまったかもしれないが(まだまだいける)、吉祥寺の御殿山にある和菓子のお店 俵屋さんの「一枚流し羊羹」を紹介したい。お店も一際目立つ存在で、間口は小さいけれど、ひっきりなしにお客が訪れる。綺麗な和菓子が所狭しと並んでいて、見ているだけで楽しい。初夏の頃、暑い時にはやはり「水羊羹」だよな、と思って1個買ってみたけれど、これが、大変美味しかった。口の中で溶ける舌触りが際立ち 「な、なるほど、瑞々しいとはこういうことか」 という認識を得たのである。いくら食感が素晴らしいと言っても、それに慣れてしまうと、感動も薄れてしまうので、1夏に3枚程度に抑えるのがよい。例えるとすれば 「本小豆で一番絞りの水羊羹」 といったところ(PDFの写真のもの)。体積の割には価格は1,050円とちと高いが、虎屋の水羊羹を買って帰るより価値があるし美味しい。

  俵屋さんは、安政二年(1855年)と155年も前から、この地で創業し続けた超老舗和菓子店のようだ。包装紙にも井の頭池やその周囲の風景が描かれていて、眺めているだけで安政二年に連れて行かれそうになる。品物は、産地最高の原材料を1つ1つ集め、全て伝統の技法を使った職人の手作りだそうで、店頭には技を凝らした品物の、季節の生菓子、和風ゼリー、栗蒸し羊羹、あずき羊羹、饅頭類、最中類、羽二重餅、大納言最中、甘納豆、など、定番中の定番が並んでいて、どれも本気で美味しそうなのである。少々余談になるが、和菓子屋も分業化が進んでいて、すでに自社であんこを製造しない和菓子屋も多い。ま、一流蕎麦屋に限って専門の製麺業者から蕎麦麺を購入しているのとよく似ている。それもあって、俵屋のお上は、暖簾の裏から「出来立てですよ」といって、まだ熱い大きな甘納豆を出してくれたりする。でも、あんこ好きの私には、お店に入った瞬間の匂いで、美味しい品を作っていることはわかっているのである。今回は、絶対お勧めの「一枚流しの水羊羹」を紹介するが、暑い時期にしっかり食べておきたい。この後も、俵屋のその他のお菓子を紹介してみたい。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%21785&app=WordPdf

 補足 一枚流しには、黒豆が入っているもの、つぶあんが入っているものなど、その店のオリジナリティーが生かされている。俵屋の一枚流し水羊羹は、完全なプレーンタイプ。きめ細かくこされているので、たいへん均一性に優れており食感が瑞々しい。

 補足 吉祥寺には、他にも幾つか羊羹や最中では名店はあるが、俵屋は受け継いだ伝統の職人の技の範囲が広いといえる。和菓子、羊羹、最中、饅頭、甘納豆などの技術を受け継ぎ、品物の一品一品の仕上げが奇麗だし、実に美味しい。これが老舗の老舗たる由縁である。