2011/02/15
オーディオマニア13
昔からHi-Fi を扱ってきたオーディオマニアの一人として、今日は40年ぐらい前までさかのぼる。あまりに古いので、若者ちゃん達には、このPDF写真は「なんじゃ」とお叱りを受けそうだが、俺たちにも青春っていうのがあった。そこんとこをご理解いただきながら話を進めたい。当時、Hi-Fi の1つの方向性としてディスクレコードとは対極の存在として、ミュージックテープというものがあった。これは、マスターテープからデュープリケータを使ってコピーして造られていたが、塩化ビニールによるプレスで造られるレコードよりHi-Fiであるとされていた。そんなHi-Fi議論の前に、レコードには静電気でパチ、パチというスクラッチノイズが発生したり、大きな溝が刻まれている場合、針が飛ぶなどの障害があった。それらを含めて、その優劣の議論は、際限なく続いたものである。
当時は、FMチューナーからテープに録音して楽しむのが普通で、今のCDと比較すると、とてつもなく鮮度の悪い音を聞いていたわけである。したがって、ミュージックテープの存在を知る人も少なく、珍しいものであった。そこで、少しばかり当時のミュージックテープの感触を知ってもらうために、あの頃の宣伝文句を並べてみた。パッケージには「NEW!マスターサウンド」と書かれており、なかなか力強い。①CBSソニー(当時のレコード会社)のオープンリールは、最も進んだメカニズムである”クローズド・ループ、デュアル・キャプスタン方式”を採用し、極少ひずみ率と余裕あるリニアリティーのソリッドステート・アンプリファイヤーを搭載したデュープリケータを使用している。②新開発のフェライト&フェライト・ヘッドを採用。さらに、このヘッドの特性をフルに発揮させるため、新たに全くひずみのないバイアス・オシレ―タを開発し、安定した性能と優れたS/N比、高リニアリティーを実現した。③テープには、定評のあるソニーのバックコートSLHテープを使用している。・・・とある。それが、どのくらい優れたものだったか、今となっては説明しにくいが、バックコートSLHは自分でも使っていた。
当時として、(いや、今でも)こんなに高いミュージックテープを購入する意欲は、どこにあったのであろうか。振り返ってみると、「若いころからオーディオには興味があったが、音楽マニアではなかった」 ということが1つ挙げられるが、高校時代に、こんな本を買って読んでいたことが影響したのかもしれない。ラジオ技術社から出ていた「ハイファイ・テープレコーダ」(上の表紙写真 厚み35mm)である。この本を隅々まで読み漁って、と言いながら理解できたのは、30%ぐらいだったと思うが、大変面白く興味深かった。この本を購入したのが昭和44年11月(1969年)だったが、その2年後1971年に上京している。父が入学祝に何か買ってやると言ってくれたので、この本の表紙になっているTC-9800 が何が何でも欲しかった。発売後数年経っているので、入手が難しく秋葉原で、最後の1台を手に入れた。当時としては、ずいぶん高いモデル(198,000円)であった。そんなことで、テープには、特別な思い入れが根づいていたと思うのである。
余談になるが、その6年後に、この「ハイファイ・テープレコーダ」を発行していた出版社へ就職することになる。それも運命だけれど、それより、その後、そのTC-9800を製造した会社へ就職するとも予想もしなかった。というぐらい、何かこれらに因縁のようなものを感じるわけだが、実は、入社後に、品川の裏の芝浦にまだ工場跡の建物があった頃の話だが、建物内の、とある通路の横にずらーっとTC-のXXXXシリーズの一群が無造作に置いてあったのを発見した。もう、とっくの昔にテープの時代は終わっていたが、自分ならもっと大切にすると、あれもこれも全部持って帰りたいくらいの気持ちになったことを記憶している。ま、余計な話はこれくらいにして、当時1971年に発売されていたミュージックテープの1例を紹介したい。発売されたほとんどがクラシックのテープで、おおよそ90%程度は買い集めたが、歌謡曲は5本程度しか発売されていないので、これは珍しい例と思う。これも「昭和の流行歌」である。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%21893&app=WordPdf
補足 SLH: ソニーの開発したオープンリール型テープで、スーパー・ローノイズ・ハイアウトプットの頭文字を抜き出したものである。早い話、ダイナミックレンジの広い録音ができるというもの。ネーミングとしては、今で言うところの、ダイハツのTNPというのとよく似た発想かもしれない。裏付けは、テープ高速回転時の静電気防止のバックコート処理といったところ。