趣味なら、やはり最高峰のカメラを使うというのが王道だが、仕事で写真を撮るなら小型で簡単な方がよい筈だ。最近のカメラメーカーは、「趣味なら本気」と称して中高年の余裕層に高級一眼レフを勧めている。その効果もあってか、あるいは別に理由があるのか不明だが、一眼レフの売り上げは、鰻登りに伸びているという。おそらく団塊の世代のおっさん連中が定年を迎え、暇だから「趣味人同士で、出会いのあるカメラ教室」へでも通ったりするのであろう。先日も、朝6時38分発の京王線に乗ったら、ちょうど目の前に、よくテレビで見る?戦場カメラマンと同じような恰好をしたおっさんがいた。頭のてっぺんから足先まで、まるでそっくりである。ただ、首から提げているカメラは、ライカであったり、腕にはローレックスと、少し「金あるぞ」的で、現地ではすぐに首狩り族に襲われたり、追剥に腕を切断されたりするような、やわな雰囲気だが、しみじみと眺めていたら、やはり恥ずかしかったのか、ずるずると奥の方へ移動していってしまった。それも彼の精一杯の「本気風の演出」だったのかもしれない。一眼レフを買った人がみんなそのような気持ちを持っているわけではないだろうが、渡辺陽一さんは少なからずそのような気持ちを芽生えさせるカメラメーカーの広告塔なのかもしれない。
今日紹介する、EOS-7Dは、出向先のクライアントに仕事用に購入してもらたもので、製品や機械物を撮影するのに使用している。今回独自の比較テストのために持ち帰ってきた。それこそ、ここからはあくまで趣味だが、一通り、平素仕事では触らない細部まで調べてみた。ということで、結論から申し上げると予想通り大変よく出来ていて感心した。両手で握るのにも手ごろな大きさで、なお重さもいい按配である。流線のフィット感が抜群に良い。価格も手ごろで、本格的な一眼レフなので、お孫さんの入学式や運動会、あるいはバレーやピアノの発表会などの、きめ細かい動きの多い動体で、低照度のスナップ撮影に威力を発揮すると思える。液晶ディスプレーの発色は、ずば抜けて優れていて後が楽しみである。また、ファインダーの視野率も100%と大変見通しがよい。セオリー通りにシャッターを切るだけで、ファインダーに覗いているものがストレートにそのまま撮影できる。
本体には、インテリジェント・ビューアファインダーだとか称して、画質に関係のないところもコストがかかっているのがよくわかる。特に、このクラスで、動く被写体に強いAIサーボAFⅡは素晴らしい動作である。あえて、難点を言えば、まだまだシャッター音がEOS-5DMK2などと同じで安っぽいので、マニアには、つまらないかもしれない。また、レンズも望遠側で周辺の光量低下が目立ち視認性はよくない。画質を一言でいえば、繊細さよりも力強い感じの印象が残る。この力強さが表に出るのは、幾重にも画像の処理が重なりすぎている可能性が高い。初期設定ではエッジが強調されていたので輪郭強調を0にしたが、それでもその印象は変わらない。発色は大変優れており、ちょっとドキッとするくらい見栄えが良い。しかし、一方で自然な発色で精細でデリケートな画質を求めるには不向きであったりする。加えて、よく言われるボケ味までもが硬い印象が残ってしまう。
所詮、撮像画面サイズは22.3x14.9mmのハーフサイズで1800万画素と、やや無理をしている感じは否めなく、画質に全方位的な期待をかけるのも辛いが、他方で、動体のスナップ撮影の使用ではシューティングマシン風のファインダーや表示機能、抜群の操作性を体感できる。これらによって、動く被写体に向けてシャッターを切る価値を高めてくれ、より興奮しながらも余韻に充実感が残る。そこに、従来の製品と一線を画すものを感じさせる。個人的には、昔から単純な操作性を求めてきた方だが、ここまでファインダー内が充実し、実際の撮影にも大いに貢献し、毎回の撮影が楽しいと、シャッターチャンスも変わると思うし、同時に撮影方法も進化できるような気がする。これらは徹底したマーケティングから生まれたに違いないが、本物を求めながらもC/Pにうるさいおっさん世代にも高い評価が得られると思われる。
ではこちら
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