前回の「オーディオマニア」は、自分のテープ歴をつらつらと書いてしまった。まあ、要約すると、自称「隠れテープ党員」であったわけだが、その公表の結果、このブログの読者にも、かつてのテープ党員が多数いることが分かってきた。まさに「仲間あってのブログ」といった感じで勇気づけられた心地である。ただ、テープ党員は一般的に高齢者が多いことが分かっており、人生の残された時間の中で、閉塞的にオーディオライフを楽しんでいるのでははないだろうかと、やや心配である。確かに、いまさら2TR38の生録の世界を楽しむには機材が古すぎるだろうし、今時、背負子(しょいこ)にテープ・デッキを担いでいる人を見かけることもない。今の若者たちは、もっとスマートにデジタル録音をこなしているに違いない。
誰しも感じていることは同じで、30年前から生き永らえたテープ・デッキの音の調子も今1つ良くないし、テープを走らせればテープの磁性粉がヘッドやピンチローラ、ガイドなどに付着し、演奏後はテープ走行系の掃除もしなければならない。一方のテープ自体は、綺麗に巻き取って保存しなければならない。テープ・デッキのロジックコントロールなどは、いつ故障するか気が気でない。そうやって色々なことを考えれば考えるほど、今となっては面倒な機械でもある。だからこそ、いつまでも手入れをして使いたいと言う人も多い。そういうところが、他のオーディオ機器と一線を画す、ちぐはぐな性質だと思える。そして、さらにメカニズムとエレクトロニクスが一体化して機能し、キャプスタンにピンチローラが圧着してテープを引っ張り、後部にあるテンションアームで随時バックテンションを調整するという、自ら微妙な状態を調整しながら安定走行させるところが、自分の人生制御にも似た頼もしさを実感させるのではないだろうか。
現在では、既に使用できるテープは販売されていない。テープ党員としては、残念ながら手持ちのテープを何度も繰り返して使うことになる。他方で、本来のテープ党員の中には、ミュージック・テープを再生するだけの為にテープ・デッキを保守してきたという人もいる。ミュージック・テープは、2TR38、4TR19の2種類が販売されてきた。2TR38は当時、大変高価(15,000円前後)なメディアであったが、どれも貴重な録音だったので、当時は奮発して買った。今も何本か残っている。4TR19はレコードより少し高価な程度であった。前回は、CBSソニーの歌謡曲のテープを紹介したが、今回は、1968年ごろ発売されたムードミュージックのレーモン・ルフェーヴルとポール・モーリアのテープを紹介したい。
ポール・モーリアの方は、PHILIPS の制作で日本フォノグラムの販売。曲目は、1.恋はみずいろ、2.悲しき天使、3.この胸のときめきを、4.愛のおそれ、5.夜のメロディー、6.蒼いノクターン、7.サバの女王、8.男と女、9.ポールシカ・ポーレ、10.パリのあやつり人形、11.恋のアランフェス、12.ラスト・ワルツの12曲入り。一方のレーモン・ルフェーヴルはセブンシーズの制作でキングレコードの販売。曲目は、1.ラストワルツ、2.花のサンフランシスコ、3.男と女、4.リリースミー、5.グルーヴィン、6.ボエーム、7.青い影、8.イエスタデイ、9.バラ色の心、10.この胸のときめきを、11.リトル・マン、12.インシャラーの12曲入り。ほぼ同時期に発売されたもので、比較のために購入した。いずれも2,800円と割安。このようなムードミュージックはレコードで十分なので、テープを購入するのは、やや不経済であった。
今、埃をかぶったケースから取り出して音を聴いても「ほぼ良好」で、テープとCDを比較して聴いてみると、テープの方が肉付きがよく、音に芯がありパワフルな感じを受ける。CDは高域がよく伸びて繊細な感じで、低音も良く引き締まっている。ま、そんな違いがあるくらいだが、再生までの手間を考えると、断然CDの方が操作は簡単である。それでも、まだ、テープ党員としては、テープに愛着がある。そんな人はPDFを見ながら、「うーむ」と、ちょっとだけ昔を懐かしんでほしい。ヘッドホンも1968年ごろのソニー製。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%21924&app=WordPdf
補足1:2TR38、2トラサンパチと読む。約6mm幅のテープを2トラック幅で使い、秒間38cm移動して記録する。4TR19、4トラジュウキュウと読む。同じテープを4トラック幅で使い、秒間19cm移動して記録する。同じテープだと、トラックの数が少ない方がダイナミックレンジが広い。また、秒間のテープ移動距離が長いほど高域のロスが少ない。つまり、どちらかと言えば、2TR38の方がHi-Fiと言える。
補足2:ミュージックテープ関係の写真は、ディスカバリー2 (ブログ内検索にて移動早)にもある。当時のブログは、まったくと言ってよいほど通常と同じ反応しかなかったが、興味のあるテープ党員は覗いてみてほしい。その時のテープデッキはTC-9000F2。今日のテープデッキは、TC-R7-2である。