東日本大震災が発生して22日が経過した。今、最も問題視されているのが東京電力 福島第一原子力発電所の今後の成り行きである。だいたい、原発を民間会社にすべて任せること自体に問題があったとか、何か事故でも起こった時に、人の手で扱えないものを利用してはならないとか、一般からもささやかれ、それを証明するがごとく、次々と新たな難題を引きずりながら崩壊に向かってきた。そして、「IAEAの勧告」を無視し、世界から信用を失うことを平気でするような政府にも呆れるばかりである。それよりも何よりも、世界に「日本の原発は=危険な発電地域」との認識を植え付けてしまった。世界的にも今後の原発計画に「まった!」が迫られることになりそうだ。
日本の電力供給は約3割が原子力発電である。今年の1月末現在の集計では、日本の民間原発数は54基(米、仏に次ぎ世界3位)で、さらに建設中・着工準備中の原発が合計14基ある。建設中は、1.東電 東通原発(青森県)1基=17年3月稼働予定、2.J-POWER 大間 原発(青森県)1基=14年11月稼働予定、3.中国電力 島根原発(島根県)1基=11年12月稼働予定。着工準備中の原発としては、1.東電 福島第一原発(福島県)2基=13年10月、14年10月稼働予定、2.東電 東通原発(青森県)1基=20年度以降に稼働予定、3.東北電力 東通原発1基=21年度以降に稼働予定、4.東北電力 小高原発(福島県)1基=20年度稼働予定、5.中部電力 浜岡原発(静岡県)1基=18年以降に稼働予定、6.日本原子力発電 敦賀発電所(福井県)2基=17年7月、18年7月稼働予定、7.中国電力 上関原発(山口県)2基=18年3月、22年度稼働予定、8.九州電力 川内原発(鹿児島県)1基=19年度稼働予定となっている。うーむ、本気でこんなに稼働させる計画だったのか・・・。
もう、これらの計画がそのまま推進される可能性はない。すでに浜岡原発の原子炉建設延期や、中国電力も上関原発での工事を中断している。その他の電力各社にしても、地域住民の理解が得られないことから、計画を断念せざるおえないケースが出てきている。特に東電による新規の原発建設などは未来永劫絶対にありえない。これらにおける原発の延期、中止の電力規模は大きく、建設・計画中原発の合計出力は約2000万KWである。すでに稼働中の原発出力が4900万KWに対し、電力不足による今後の設備計画は大幅な見直しを迫られることになる。この流れは今、全世界に急速に広まっているようだ。
しかし、環境や高騰する資源価格を考えると、簡単に石炭・石油などによる火力発電や太陽光、風力、海流などの発電に転換できるかと言われればノーである。これが、人々の意見を二分している要素でもあるといえる。確かに、現在の我々の生活だけを考えれば、今後は、壊れない原発があったとすれば50%賛成、壊れるかもしれない原発に50%反対なのである。つまりみんな同じ意見なのである。壊れてもよい原発に50%賛成しているわけではない。そこを統計値として大きな誤解をしてはならない。そして、やはり数十年後の未来の人たちの立場で原発というものを考えて、早い時期に我々自らの責任で方向性を示す必要があると思う。
私は、昔からこの原子力に関する研究者のレベルは高いものになりえないと考えている。本当に優秀な人は、この、目に見えない危険な分野を扱わないはずである。仮に扱ったとしても、実験室レベルで高速なコンピュータがあれば十分研究はできる。つまり、研究者にとっても巨大な原子力発電装置は興味ないのである。興味あるのは電力会社だけである。したがって、理屈の中で、あくまで理屈を通して、見よう見真似で構築・運用してきたのが日本の原子力発電の歴史ということになる。優れていた点を挙げるとすれば、機械加工精度が高いといったことぐらいである。いったん事故が起きると、研究者が集められるが、その時、彼らにとって実験レベルを超えた手に負えない巨大な物体を目にするだけである。
今後、原子力発電所を優れた施設に仕上げて行くためには、理屈上多くの事故に遭遇し、難題を解決してゆく実績が必要になるが、人類はその長い時間に恐らく我慢できなくなるに違いない。それだけは明白である。