2012/03/22

撮影所のある街


     調布駅から多摩川へ出て、狛江市へ抜ける川沿いの遊歩道を行くと、角川大映撮影所と日活撮影所の脇を通る。最近角川大映撮影所は改装されて綺麗になったし(上の写真)、日活撮影所も新装工事に入っているようで、物々しい目隠しをしている。日活撮影所には、映像の専門筋を育てるための日活芸術学院が併設されていて、時折、多摩川の河川敷で撮影練習をしているグループを見かける。また、放送中のテレビドラマの撮影現場に遭遇することもある。通行規制や携帯撮影禁止と書かれた看板とか、巨大なライトやレフ板が置いてあったり、発電装置や本格的な撮影機材が無造作に並んでいる。通行者はついつい遠くからでも俳優さんを探してしまうわけだが、いつだったか、あのザ・ガードマンの宇津井健さんと、ごくせんの仲間由紀恵さんを見かけたことがある。

 角川大映撮影所の正面へ向かう道の右側には公園があり、そこには、俳優協会理事長 池部良さんの映画俳優の碑があって、著名人の名前が彫られている。並んで森繁さんの「生涯を映画に生く」と書かれた碑もある。調布市布田には、あの㈱石原プロモーションがあったり、旧甲州街道沿いの布田と国領町の間には高津装飾美術㈱がある。また、調布市国領町には、どの窓も黒いカーテンで覆われた異様なビル 東映ラボテック㈱もある。㈱東京現像所などは、大学の隣にあったので、学友が徹夜のアルバイトをしていた記憶もある。また、品川道と野川が交差する場所には、ウルトラマンが空へ飛び立つような格好をしたオブジェが屋上に見える会社があったり、興味がなくても目についてしまう。そんな調布は、東洋のハリウッド?と言われるぐらい面白い街なのである。

 それにしても、なぜ、調布近辺に映画産業関連の企業が多いかといえば、「この場所のルーツとなる日本映画株式会社の多摩川スタジオは、後の調布市長となる本多嘉一郎さんが昭和7年この地を調査に訪れ、「水澄み、時代劇、現代劇に最適なり」と報告して、建設に着手したと伝えられているからで、やはり、元々フイルムの現像に適した、綺麗な水が豊富に得られた場所らしい。もちろん、すでに京王帝都電鉄が走っていたことも一役買っていたわけである。その翌年の昭和8年には、この広大な土地に撮影所が出来て、昭和30年頃には市内に大映、日活、独立映画などの撮影所や㈱東京現像所、高津装飾美術㈱などの関連企業が集中したと言われている。

 近くに住んでいても、その様な産業に参画しなければ、なかなかその値打ちは分からない。でも、時折、今でも旧甲州街道で、乗用車の窓を開けながら、「西部警察はどう行けばいいですか?」と聞かれたりすると、自慢げに「この道をまっすぐ行って左ですよ、でも、今日は大門さんはいないすよ!」と返すこともあるし、子供さんから「ゲゲゲの鬼太郎は、何処で撮影してるの?」と聞かれたこともある。こうやって全国から足を運ぶファンがいることに、その層の広さを感じるわけである。そして、テレビ・ドラマの最後に出てくる会社の名称が、このあたりの会社だと、やはり身近に感じられて、一寸うれしい訳である。
それではこちら
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補足:角川大映撮影所の上の写真はクリックで大きく表示されます。それによって、入口付近に置かれた自転車との対比で、背後の「はにわ」姿の大魔神の大きさがわかります。