潮の干満を利用して、庭園の池の水位を変化させ、それによって庭全体の趣が刻々と変わり、同時に見どころも移り動いて行くように造園されていると聞くと、1度は入園して眺めてみたいと思うものである。いつも、この庭園の前を通ると、度々そう想いを馳せていた。モノレール、山の手線、、新幹線、そして地下には都営地下鉄大江戸線、JRの横須賀線、と所狭しと電車が走り抜けるこの場所で、敷地面積43,175㎡、池の広さ9,000㎡と、果たしてそんな巨大な空間が存在しているのだろうか、周囲はそびえるようなビル群が建ち並び、あちらこちらで都会の喧騒がビルの谷間に響き渡り、人々はせわしなく信号を行き交う街である。
JR浜松町駅の北口で降りると、山手線のガード下に出る。その前の横断歩道を渡ると文化放送である。そうだ、入園する前に、NGUYEN(グエン)に行って腹ごしらえをしておこう。丁度11:30で空いているはずだ。予約なしだから、先着順の自由席に座る。今日は、ブイヤベースか仔牛のステーキらしい(上の写真)。ところで、すぐ思い出してしまう、この店の何処に魅力が秘められているのであろうか、もちろん、その丁寧な下拵えに手間を掛けた上品な料理もさることながら、食器そのものに感慨深いものがある。お皿の周囲では、何やら多くの人たちが楽しそうに祝い事をしている姿が描かれているのである。そんな姿を見ていると、つい、お皿に向かって何か言葉を掛けたくなるのである。そんな小世界を覘き込み、宮廷の優雅な暮らしに想いを馳せることができるのである。
旧芝離宮恩賜庭園の入園料は、150円であった。がしかし、年間パスポートは600円である。恐らく、フジ、サクラ、サツキ等の咲き誇る「春」にはじまり、ハナショウブ、キキョウ、ハマユウの「夏」、ハナミズキ、モミジ、ケヤキ等の紅葉やヒガンバナ、ツワブキ等の楽しめる「秋」、そしてウメやスイセンの「冬」の四季を想定した価格なのであろう。でも、近所にお勤めなら、毎日昼休みなど200日近く通っても良いのである。園内に入ると、「うわ~!広い」と叫びたくなるような絶景に遭遇する。正面には、白い東京ガスのビルがそびえ建ち、池に影を落としながら迫ってくるような錯覚に襲われる。水辺には、鯉が物欲しそうに岸に沿って口をあけてうごめいている。なのに、近くには「鯉に餌を与えないように」と但し書きが目につく。
池の周囲を散策し始めると、カメラ目線ではたくさん撮りどころがありそうで、もっとじっくり眺めたいと思う半面、次はどうなっているのだろうと期待をして、つい足早になる。そんな、秘めたる魅力を想像してしまうのだが、ビルの影だけならともかく、建物自体が水面に写り込んでしまい、芝浜と呼ばれていた歴史的な風情や眺望が無残に切り取られてしまっている場面も多い。池の周囲を1週するには30~40分程度かかるが、時折、一日中座り込んで眺めていたい場所もある。今日の様に一寸汗ばむ日でも、風の通る日陰は気持良さそうだ。
さて、今日の写真だが、庭園内部の大山から入口の管理所の方へ向って撮影したもので、ちょうど品川から東京駅への方角になる。写っているのは、庭園全体の1/5程度でしかないが、古き庭園の雰囲気を覘かせる、どこか懐かしいポイントだと思う。追加で説明を加えるなら、フレームに写り込んだビルの名称になってしまうが、正面中央が汐留芝離宮ビル、正面左が文化放送のビルになる。
ではこちら
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補足:NGUYEN(グエン)の過去の紹介はこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%21847&app=WordPdf