2012/06/08

オーディオマニア27



  幾つかのユニットを組み合わせてシステムを構成する場合に、一番最初に気になるのが周波数特性である。自からも時間と手間を掛けているので、広い周波数範囲でフラットであることが望ましいと漠然と考えているわけである。今回も、殆どの作業を無響室で行ったので、おおよその目標を確認しながら調整を進められたわけである。例え理屈どうり上手くいかなくても、クロスオーバ周波数やカットオフをこねくり回しても、さほど大きく改善されるわけでもないし、変化しないのがスピーカの性質といえる。ただ、何らかの手違いや勘違いで誤りの発見や、あるいは吸音材の調整などには無響室は大変優位性が高い。それにしても、この1台の為に無響室を占有するなんて何と贅沢な事かと思うわけである。

  周波数特性を経験的な見地から補足すると、一般的なスピーカシステムでは、再生周波数範囲が40Hz~15KHzあれば、まず音質的に問題を発見することは難しい。一方で専門筋の研究では、再生周波数範囲が 80Hz~4KHz 確保されていれば、音質への不満は6%程度に留まると言う報告もある(音源としてクラシック音楽をフィルタで切り替えて比較視聴した時のもの)。つまり、如何にそのあたりの周波数特性が重要かが分かるというものである。確かに、クラシック音楽でピークの音圧レベルを周波数スペクトラムで調べると200Hz~2KHz あたりが楽音中心のピークで、それよりも高い方、低い方共に14dB/oct 程度の傾斜で低下している。

  次に重視されるのが指向周波数特性である。計測時のマイクロフォンの位置によっても、あるいは、ユニットの配置によっても指向周波数特性は大きく変化する。いつも、0°と同時に30°、60°の周波数特性を採っているのはそのためで、ユニット時のみならず、システム実装時でも30°、60°の特性が素直に並んでいる特性が望ましい。ただ、ユニットを縦に配列すると左右方向の指向性は改善されて綺麗に見えるが、ユニットを横に並べると左右方向の指向性は各ユニットから再生される音の干渉によってレスポンスが低下する周波数がある。これは自然の原理で、ホールなどではむしろ積極的にこの原理を応用して左右の指向性を改善するために、縦に同じユニットを配置しているケースも見受けられる。

  今回このシステムでは、ユニットの配列は円形配置を採っているが、その理由として音響中心をキャビネットの中心に置くのが原則だからである。それによって、①ステレオ再生時の楽器の定位に優れている。②楽器の音や人の声がまとまりやすく自然に聴こえる。しかし、トゥイータとスコーカは、縦インラインに配置して、中高域の指向性や定位感を改善している。実際に指向周波数特性を上下左右でそれぞれ30°、60°の周波数特性を収集してみたが、理屈通りの結果になっている。ユニットがマイクロフォンに対して縦に並ぶ位置にある場合は、指向性は改善されるが、横に並ぶ位置にある場合は、干渉によって大きなディップが発生している。  
ではこちら
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