2012/06/19

シュウェップス・ブリティッシュ・レモントニック


     トニックと聞いただけで散髪屋のイメージが漂ってくるが、整髪料ではない。恐れ多くも「女王陛下の007」が英国から運んでくるという由緒正しい飲み物で、歴史を重んじる国の紳士淑女の飲み物でもある。空きっ腹で口にすると、喉下から胃袋あたりまで、スースーして涼しいかと思ったが、全くそんなことは無かった。苦みのあるレモンの入ったジントニックの様な味わいである。元々トニック水等は、炭酸水に幾つかのハーブをブレンドして作られるので、薫高く爽やかな喉越しが魅力といえる。ただ、トニックは飲み物以外に、シャンプーを始めとして、様々に展開されたエッセンスであるために、人によって、口にするには抵抗があることも考えられる。

     このレモントニックには、成分として抗ウイルス性に優れたハーブのカッシアが使われている。蚊や虫の中には、これらハーブの薫を嫌うものが多く、その薫のする体へは寄りつかないことから、「虫よけ」の効能もあったといわれている。英国の植民地政策時代のインドで生まれ、もっぱらマラリアの予防に使われたという伝えもあることから、当時の英国人に親しまれた長い歴史ある清涼飲料水なのである。

     幅広く清涼飲料水を提供するコカ・コーラは、時たま風変わりな製品をリリースすることから、その類いの一環だろうと思われるかもしれないが、これは米国式のドクターペッパーとは違う。フランスから来たあの「オランジーナ」の売れ行きを横目ににらんだ、それにピンポイントで競合する商品といえよう。今、優しい柑橘飲料としてオランジーナは若い女性に売れに売れている。フランスの田舎を思い浮かべる風景と、帰ってきた寅さんことチャードギアが良く溶け込んだコマーシャルが好印象でヒットに繋がったと思われる。

     そこで、コカ・コーラとしては、ハードボイルドな007でビターレモンのトニックをぶつけて来たわけである。いずれにも共通するイメージとしては、日本で開発・製造しているにもかかわらず、海外で長い間親しまれている商品を、あたかもそのまま持ってきたような雰囲気を出すところにある。それが、コマーシャルのジャガーに乗った007こと「ピアース・ブロスナン」の登場となったわけである。苦み走ったビターな男前の中の男前がお宅まで届け、世の奥様方を虜にするシーンが象徴的である。そんな奥様方には、10本でも20本でも好きなだけ飲んでほしいものである。

      清涼飲料水は、穏やかで上品なものから超刺激で後味を楽しむものまで様々だが、人は、常に同じものを飲むわけではない。場所や天気、気温、湿度等の外的要因でも飲みたいものは変わる。また、イメージだけでも憧れの人と同じでありたいと願う気持ちとして、同じものを口にしたいと思うこともあるだろう。このレモントニックを口にしながら、昔あこがれた「ピアース・ブロスナンのイメージすることで、身のこなしまで007になれるかもしれない」と思えるのである(ムリムリ!)。そんな、中高年にまで幅広く愛される商品を狙っているのである。 
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