深大寺門前あたりのお店では、かつて若旦那達がお店を引き継ぐ世代交代の時期だったと思うが、じわじわと蕎麦も工夫され、美味しくなってきたという現実がある。それには、お店ごと特徴付けが割り振られて、単純な構図で競争するのではなく、「個性を出しあって」新たな蕎麦街を深大寺の門前に展開しようと、腕をふるってきたのである。もはや単なる蕎麦屋の域に留まらず、深大寺蕎麦文化と例えられそうな店が軒を連ねている。勿論、その背景には技術の修練、蕎麦の品質向上、競争意識など、評価は店ごと異なるにしても、数十軒ある蕎麦屋が「深大寺蕎麦」という一種のブランドとしてまとまって、広く集客に貢献していると思われる。しかし、まだまだ若旦那達の向上心は留まるところを知らないようだ。
「年末年始の頃に、ブログで蕎麦の話をするのはタイムリーなのかもしれないが、美味しいのは、いつ頃なのか」という質問が意外に多かった。確かに、時期的な食べごろというのも重要には違いないが、それぞれのお店が「個性を出しあって」いるので、お店ごと味わい方が異なるということも忘れないでほしい。経験的には、一年通して一定の水準は保たれていると考えて差し支えないと思う。むしろ、季節によって戴くものを選ぶことが大切だ。ただ、あくまで時期的な食べごろが、参拝のきっかけになるとすると、深大寺蕎麦が今どのような状況なのか、ひとっ走り、参拝がてら取材してくることにしたのである。
今日は、季節がら気温は丁度よい案配で、寒くもなくお出かけ日和でもある訳だが、深大寺は特別に日が暮れるのが早いので、1枚上着の準備が必要だ。平日だと言うのに何だか「深大寺周辺も、蕎麦屋も」大変混み合っていた。11月15日に向けて七五三の祈願を受け付けているようだ。因みに、祈願料は5,000円~とのことで上限は無い。これで「健やかに成長して、出世してくれる」なら、お安いものだ。しかし、晴れ晴れと着飾った子供達は見当たらなかった。おおよその参拝層は、やはり、年配の人が一番多く、次が定年を過ぎたくらいの御夫婦、若い二人ずれ、子供連れの夫婦などの順である。こういう場所でも、「定年を過ぎたくらいの御夫婦」が増えているということは、今後まだ20年くらいは、深大寺への参拝客も増えそうである。
さて、この時期は既に「新蕎麦」が出ていて、お店によっては100%蕎麦粉使用、つまり「新蕎麦で十割蕎麦」が用意されている。十割蕎麦は、都内の蕎麦屋で取り扱う事はないので、一種の珍しさが人を集める。製造方法も難度は高く、様々のノウハウが積み重なってお客に提供されている。これがいわゆる「若旦那が腕をふるう」証なのである。それには、蕎麦粉を超粉末にしなければならないとか、蕎麦打ち、茹でなどに神経を使うし、にも拘らず、決して食べ易い蕎麦麺にはならないからだ。つまり、時間と手間がかかる割には、評価する人が少ない。しかし、薫は高く、喉越しにも独特の食感があり、お好きな人にはたまらない「究極の蕎麦」と言えそうだ。ということで、今日はとりあえず、一休庵で十割蕎麦を堪能してもらいたい。時間帯は早めの11時半以降か、午後なら14時以降がよい。
ではこちら
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