2012/12/25

ほめられ香りだし

  前の日から、鍋に水を入れ、いりこ、昆布、乾燥椎茸を加えてそのまま放置する。朝が来る7~8時間後じっくり溶け出した出汁に、さらに削り節を加えて煮出す。その出汁を、お雑煮、お吸い物、味噌汁、うどんやそばのつゆなどのベースに使う。誰しも、このような母の姿を幼い時から観てきた筈である。地域によって多少材料が異なっても、この姿が、日本の家庭料理の基本の型なのである。出汁作りは、素材が良ければ最終的な料理が「間違いなく美味しくなる」。それを我々は忘れかけている。それは、家族が少ないことや、このような出汁作りが、普遍かつ計画的で手間がかかりすぎるし、コストも割高になる。「拘りの蕎麦屋」でも開店するならいざ知らず、即席の顆粒などで十分美味しいと考えらているからである。

  美味しい素材と、手間と時間の掛かる出汁作りを珈琲に例えるなら「水出し珈琲」に相当する。一方、即席顆粒の出汁を例えるなら「即席珈琲」といったところ。この違いは、歴然としたものがある。さすがに即席出汁は、一度顆粒になるため薫りが激減し、味を濃く仕上げる傾向になり、しいては塩分が強くなる傾向がある。できれば、逆の「味は薄いが薫りが高い」状態が健康にも良いし、それに美味しさを感じて、次々と口へ運びたい動機が満ちてくるのがよい。お味噌汁に例えるなら、この味噌汁と御飯があれば、もう十分満足と言えるような「高級和食店のお味」といったところである。それが当たり前であった昔を思い返すと、現代なら、もっと「美味しいお出汁が簡単に採れるようになってもいい」と思っている人は少なくない。特に昔から拘ってきた奥様方が強く希望してきた。

  今日紹介するのは、そういった人達から推奨されそうなネーミングの「ほめられ香りだし」という商品である。これは、鹿児島の鰹節会社の商品で、薫り高く美味しい出汁が簡単に採れる。これを使い始めると、もう以前の即席には戻れない代物である。それは、はるかに「美味しいし、簡単」だからである。このような形態の商品は、特に珍しいわけでもないが、原材料や鰹節の品質の違いによって、再現される薫りも違うし、美味しさが違ってくる。今回比較として、豆腐とネギと味噌を用意し、「ほめられ香りだし」と「千代の一番」とを全く同じ作り方で比較してみた。「ほめられ香りだし」は、「ああ、これはいい」とにかく「美味しいわ」といった、わかりやすい旨味と美味しさが再現される。一方の「千代の一番」は、昔ながらの美味しさと上品さが引き出せる。恐らく、ブラインドテストをしたら、10人中7人までが「ほめられ香りだし」に軍配を上げるに違いない。

  チャックつきの袋の中に抽出用の10包が入っている。その包には細かい素材が10gほど入っていて、おおよそ500gの沸騰したお湯に2~3分煮出して使用する。これには「焼きあご」が含まれていて、格別な柔らかい旨味と薫りが楽しめる。これが美味しさの大きな決め手になっていると思われる。この包の素材でもある魚の小片は、出汁として抽出するだけではなく、そのまま他の調理の隠し味としても利用する事が出来そうだ。このような出汁をティーパック形式で素早く抽出する自然素材は、高級日本料理店などに古くから存在していたが、業務用として大量仕様がほとんどであった。家庭用に使われるようになったのは、小口仕様で調味料を加えた完全製品で手間が無く、価格も大幅に下がってきたためで、今回の商品は、500gの出汁の制作に40~50円程度なので、かなり無理の無い価格である。是非、年越し蕎麦やお正月用のお雑煮、煮物等に使いたい。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%211236&app=WordPdf

補足1:「あご」とは、飛魚(トビウオ科の魚の総称)は、日本近海、瀬戸内海などで見られる。飛魚は、水上艇のように胸ヒレを広げて水上を滑空する。飛魚は美味しい魚としても有名で、よく刺身などでも食べられている。

補足2:「千代の一番」を紹介したPDFページ(再掲)。
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%211117&app=WordPdf