2013/03/26

春の餅

  切り通しへ写真を撮りに行って、もちろん他にも色々散策しながら歩き回ったのだが、途中からやっぱり、目の周りのかゆみや、突如襲われるくしゃみに往生した。そのお陰で大きく体力を奪われてしまい、風邪をひいたような症状に見舞われた。なぜ年々症状が悪化するのか疑って考えてみるに、様々に悪い方へ想像が巡っていく。その中でも、毎年福島原発が放出した放射能がスギ花粉に混じって関東を襲うとも報道されてきた。そのせいかもしれない。うーっ、それでも、今だに放射能を放出し続けている4号機は、これからどうするのか不安に思っている人も少なくないはずだ。もう、風の強い日には、外で活動することを控えるべきだろう。広島大学の知り合いの放射線科のドクターに言わせると、いかに低放射線でも自然界に存在しないレベルで継続して浴びることがよくないらしい。「癌になるよ」と言われた。

  今日は、朝から少し雲行きも怪しく、路が湿っているので、新宿で何か季節物でも買ってそれで春を満喫したいと思う。以前に、ぜんざいを買って「豆の薫りと美味しさ」にふるさとを思い出した「たねや」に寄ってみることにしたのである。この季節、やはり人気の商品は、どう考えても「草もち」と「さくら餅」のようで、注文している声もそればかりであった。草もちは、たねやの永源寺農園で育ったよもぎを搗きこんだ餅のこと。よもぎ餅が粒餡を包んであり、上部には焼を入れて芳ばしさをかもし出している。このあたりが何ともいえない一種独特の美味しさを演出しているのである。一方のさくら餅は、白餡を薄紅色に染め、道明寺で包み、桜の花を添え、塩漬けしてあったさくらの葉で周囲を覆ってある。まったく手が込んで繊細な仕事を眺める事ができる。販売期間は、いずれも4月初旬まで。今の季節の和菓子ゆえ、スギ花粉が飛び回る今時とは、少し趣の違った「懐かしい春の薫り」に包まれる。そんな、ひと時を過ごせるはずである。

  和菓子とか餅に無縁な人に、僭越ながら文面を補足をすると、「たねやの永源寺農園」→滋賀県東近江市山上町にある自社農園のことである。よもぎを搗きこんだ餅→「よもぎ」は菊科の植物で春先に新しい芽が出る。薫りがよく「心を癒す効果」もあると言われている薬草の一種。その芽を野原や公園で摘んで来て、お湯で茹でて細かく刻んでおく。一方、上新粉(→うるち米を精白し、粉砕したのち乾燥したもの。)にお水を加えて、よく練り合わせ15分程度蒸仕上げる。それに刻んだよもぎを加えてさらに練り上げる。この作業は、大量だと機械で行われるが、少量なら手作業でも可能。それで、餡子を包んである。その「よもぎ」は、幼い頃祖母と一緒に近所の二河公園で摘んだのを覚えている。確かに、自家製の方が出来上がってから早く口に入るので、よもぎは薫り高く優れていたと思う。しかし、たねやの商品は、上部には焼を入れてあるので、自家製に比べて少しよもぎの芳ばしさが漂う。

  さくら餅には、道明寺餅(関西風)と長命寺餅(関東風)の2種類がある。したがって、たねやとしては、区別する為に「道明寺」で包むという表現になるようだ。道明寺は武将の携帯食を作っていたことで、糒(ほしいい)の事すなわち「道明寺」と呼ぶようになったらしい。そして、もち米を細かく砕いた物まで「道明寺製」のことを「道明寺」と言うようだ。何か職人(プロフェッショナル)的な言い訳を用意したと思われるかもしれないが、関西人にとって、伝統的で結構重要な懐かしい美味しさに繋がるのである。もちろん、器用なおばあちゃんのいるお宅では、もち米を少し硬めに炊いた物で代用して、簡単にさくら餅を作られるかもしれないが、残念ながら私としては、和菓子屋で買ってくるものという楽しみしか想い出は残っていない。そこで、昔から1つ気になっている事があって、癇性病みと思われるかもしれないが、さくら餅の周囲を取り囲むさくらの塩漬けの葉は、どうしても食べなければならないのだろうか。そこで、調べてみた。本来はその独特の薫りを楽しむらしい。ほんの僅かに毒性があり、食べすぎはやはりよくないそうだ。
ではこちら
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