2013/03/29

時代を追う 1

  今、日本の防衛に不安を感じる年配が増えている。そういう人達の不安は、意外にも当たっているかもしれない。中国の軍備拡張に伴う他国への侵略に対して、米国がどのように関与するかによっても評価は変わるが、米国は中東での苦い経験から、恐らく自国の犠牲者を出さない範囲に限定し、かつ火気投入は日本の費用負担に基づく事を限度とするであろう。その費用負担は、おそらく日本経済に大きく圧し掛かるはずだ。決して枕を高くして寝ていられる状況ではない。そして長引く有事は見捨てられ、いずれ孤立する。戦後68年も経過して、今、安全保障の枠組みが大きく様変わりしようとしているのである。中国は、今、核弾頭を4,000発という世界を震撼させるだけの膨大な数を配備している。北朝鮮の核に対する脅威とは、まるで桁違いの状況なのである。そして、周辺諸国へは金銭をちらつかせる外交も怠らない。もちろん、北朝鮮と韓国は中国の出先機関と化している。すべて背後で中国が糸を引いていると考えて差し支えない。いずれ沖縄県も中国の自治区になると呟く年配は多い。

  四川の大地震は、中国の地下核実験によるものという信憑性の高い報告もある。4,000発もの核弾頭は、米国を初めとする先進国に向けられており、日本も例外ではない。これは、一種の脅しの材料である。そんな中国は、裏で米国へふしだらに関係を迫っているが、米国もあからさまに嫌な顔をしにくいのである。その様な材料を背景に、米国は日本へ遠まわしにTPP参加を迫ったと推察されるのである。勿論、他にも合理的な理由をつけていたのだろう。米国の日焼けした男は、安倍総理を当初甘く見ていたに違いない。安全保障をちらつかせて少し脅せば、昔のように日本は「現金自動支払機」になり下がると考えていた筈だ。しかし、安倍総理はTPP参加についてTPP以外での多くの条件を突きつけた気配があり、これが、世界を巻き込んだ経済競争に繋がる可能性があると思われる。記者会見での日焼けした男の顔は、不愉快そのものであった。しかし、安倍総理の「強固な信頼関係を取り戻そう」という口先外交は、中国の米国に対する「靴を履いてみよう作戦」の前には、結構もろい様相を呈していたのである。

  さて、話は戻って、年配者は自衛隊の戦力分析にも時間を費やしている。海上自衛隊はイージス艦を初めとし世界第二位の戦力を持ち、隊員は世界一の船乗りで構成されている。海の中から睨みを効かすのが潜水艦。こちらは、現在世界一の探索能力を誇り、また探知されにくい建造技術を誇る。呉出身の私が言うのだから間違いは無いと先輩を説得する。原子力潜水艦は熱を出すので探知されやすい。この海上自衛隊には、中国をはじめアジア諸国は全く刃が立たないのである。しかし、不安なのが、航空自衛隊である。次世代ステルス戦闘機F35の導入は随分先なので、相変わらず35年前のF15Jと、13年前のF2が主力となっている。おまけに、ベトナム戦争で活躍したF4ファントムまでも今だ現役と、やや博物館の様相を呈している。そこに、沖縄にいる米軍のF22Aステルス戦闘機がそれを補う形になるという。因みに、2006年の模擬演習では、F22A 1機で144機のF15を撃墜し圧勝したことが報告されている。驚愕の破壊力ではあるが、レーダーに写らないF22Aへは攻撃する術が無いし、どこからミサイルが飛んでくるか分からなければ逃げ場もない、と言うのがステルスの理屈である。しかし、あくまでもF22Aは米軍の戦闘機である。自力で国を護る為には、いくら優れたパイロットでも探索能力の足りない無防備でおまけに火力不足のF15J、F2では、心もとないし、彼等自身の命を護ることすらままならないのである。

  そこで何とかF15とF2をアップグレードしなければならない。既に電子機器などは改良が加えられてきてはいるものの、これから必要とされるのが「赤外線探索追尾装置(IRST)」とされている。これは、既にユーロファイターEF2000、ミグ29/スホーイ27に実装されており、近距離での空中戦に有効に機能するという。アラスカで行われた模擬戦では、50Kmの近距離で、ユーロファイターのIRSTは発熱の大きいF22Aを素早く発見してしまい、ここではEF2000が圧勝したそうである。もちろん遠距離ではF22Aが有利とされるが、現時点での実戦では、はるかに近距離での空中戦が多いようだ。そのIRST技術は、既に国産で開発・実証済みで、予算次第でF15に実装・配備できるらしい。そして、その次に有効性が高いとされるのは、相手のレーダーから出る電波を主翼端のアンテナと垂直尾翼のアンテナで受け、三次元で相手の位置を算出するという「高精度方探システム(ESM)」である。この開発には、F2を使って既に昨年中に実証済である。いずれも、全機に搭載されるべき装置だが、予算が回らないようだ。しかし、研究は次々と続けられている。国産ステルス実証機(開発中)に搭載予定の「先進統合センサ・システム」の研究を141億円の予算を投入し、3年先までの完成を目指している。

  これらの背景にあるものは、F22Aのダウングレード版であるF35Aでは、戦力として心もとないと判断されているからに他ならない。航空自衛隊のパイロットは世界的にも優秀と評価は高く、同じ戦闘機で戦えば負ける事は無いが、しかし、戦闘機の不備による機能や性能までもカバーできるものではない。それにしても、命にかかわる装置は、早く必要な予算をつけて万全を期してもらいたいものだ。そんな話から、今日はF15Jイーグルの模型を用意した。これには、IRSTもESMも搭載されていないタイプ。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%211259&app=WordPdf

補足1:ここで言う年配者は、78~82歳ぐらい。大東亜戦争当時6~10歳ぐらいの人。彼等にとって、米国も中国も同じ敵国なのである。
補足2:「靴を履いてみよう作戦」とは=靴は履いてみないと分からないと言う屁理屈。何処へ行っても外交の場で話される。中国と共存共栄してみましょうよ、きっといいことありますよと言う例え。日焼けした男もなるほどと思ったらしく、自分も他の国で使ったようだ。