2013/04/02

広島風焼きそば


  こんなページを創作すると「焼きそばも、広島流が旨いんか?」と問いかけられそうだ。もちろん、今流行のB級グルメに登場するような斬新さは無いかもしれないが、監修に携わったお店は、昭和25年創業と言う、私の生まれる3年も前から「お好み焼きとか焼きそば」を一筋に提供しているので、それはそれなりに、いつも「美味しくて、安心感がある」のだと思う。一方で、そういう人気が63年も続き、おっと、これからも続くわけで、それもまた、まぎれもなく凄いお店ということである。つまり、とりもなおさず「それは、地元で愛されてきた」という証でもある。そういう事実を無視しているわけではないが、私を釘ずけにしたのは、美味しそうな「焼きそば」にあるわけではなく、実は、このパッケージの「当時を思わせる微細な風景デザイン」だったのである。このノスタルジーに、ひき込まれてしまったのである。

  このパッケージの風景デザインを見て、今でもこの辺りに懐かしさを感じる人達が、何人生き残っていらっしゃるかわからないが、「マルちゃん」の目の付けどころは、一体どこまで遡るのであろう。確か、私も4~5歳ぐらいの幼いころ、母の買い物に連れられて、何度かこの近くまで来た記憶がある。当時は目線が低いので、ここまで鮮明な感じの記憶はなかったが、このようなお店の形態「お店なのか屋台なのか」わからないような並びに、強い印象を残していたのである。高い場所から望んだとしたら、まさにこんな感じだったと思う。そういう一種の現実感までも浮き彫りにしていたのである。

  パッケージの話ばかりになってしまったが、それはさておき、広島で色々なお店で焼きそばを食べ比べてきたわけではないから、この製品が他の店に比べて美味しいに決まっているなんて断言出来るわけではないし、それを押しつける気持ちもない。長い間、その地域で愛されてきた背景が、「焼きそばの美味しさ」だけではないからだ。人は、なじみのおやじのいる店で、安心して、仲間と一緒に舌鼓を打ち、いつもかわらぬ会話が楽しいわけで、そこには、癒しにもなったソースの薫りが漂っていたからなのである。


  だから、美味しさを競い合うような豪華なグルメ志向には、そぐわないような気がする。それは、同じ時間を共有する、お客との関係であったり、近所の人達との仲間意識であったり、そういう関り合いを大切に、戦後を一緒に復興しながら共に生きてきたという事実が、みっちゃん総本店を盛り立ててきたのである。その歴史も微細な風景デザインに写し込まれていると思う。こういった、中高年を意識したパッケージ作りは、ある意味適度な哀愁を引きづり、世代の弱みと言うのか、そういう琴線に触れるような仕掛けによって「一層味わい深い焼きそばにしよう」としているのであろう。そんなきめ細かい「マルちゃんの企画力」を思い知らされたような気がする。

  さて、この焼きそばをここでどう扱えば良いか悩んでいた。これをどのように作ったら、「みっちゃん総本店」の雰囲気が再現できるのであろうか、ということである。やっぱり、強力な火力の鉄板の上で「焦がしソース」で食べる焼きそばは絶対に美味しいのである。ところが、このような、「蒸した麺を弱火のフライパンで作っていく」こと自体に少々無理があるような気がする。それでも、雰囲気だけでも楽しむには、それに近づけるしかない。そのために、まず、1食ごと強火ベースで丁寧に作るという事である。あらかじめ作業することとして、豚肉もしくはベーコンは強火で炒めて油をフライパンに移しておくこと、キャベツ等の野菜は電子レンジで十分加熱しておくこと、そして焼きの作業は、蒸し麺には水を加えず、麺をほぐす時だけ弱火にしてほぐしながら炒めること、そして、再び強火でフライパンの真ん中にスペースを作り、そこに液体ソースを入れ、ソースを少々焦がしながら麺を絡める。という手順を守ってほしい。そうすれば、多少なりともお店のイメージに近づくと思う。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%211212&app=WordPdf

補足:パッケージの裏面には作り方が掲載されていて、それには、「麺を入れた後、その上に水50ml(1/4カップ)を加え、静かにほぐしながら水がなくなるまで炒める」とあるが、水を加えないほうがよい。