へー、ついにここまで?と、ヒットしそうもない新製品を眺めながら、かつての学友を思い出していた。彼は猫舌で、おまけに暑がり、そして神経質、とくるから、夏は「冷し中華」しか食べない。 もちろん、三食すべてではないが、少なくとも、昼間学食で他のメニューを食べる姿を見たことがなかった。そんな彼が40年後の今も生きているとは思えないが、意外にそのような隠れた「冷麺」好きがいるのをマルちゃんは忘れてはいなかったようだ。そんな希望的観測からか、あるいは他の正麺シリーズで儲かりすぎた背景からくる特別企画なのか、ついに、東洋水産㈱は特許製法「生麺うまいまま製法」を使った、挑戦的な第二の矢を放ったようだ。
麺好きは、どのお店に入っても「麺は硬目でお願いします」と伝える。蕎麦屋も、イタリアン・パスタも同じである。そういう人達を見ていると、本来の麺の固さはどのくらいが流行なのか考えたり、自分でも少し判断に迷うことがある。さーて、冷し中華はどうすればよいのか、改めてこのパッケージをひっくり返してみる。すると1リットルのお湯で5分と「赤ベタ白抜き文字」で表記されている。いくらなんでも5分は長くねえ?と思いながら、マルちゃん正麺の太さを観ながら、とりあえず3分程度にしてみよう。茹で上がったら麺を水でさらし、笊でしばらく水を切る。付属の調味液は30g程度用意されている。袋の中に入っているのはこれだけである。どう見ても、きゅうり、錦糸卵、焼き豚、等を乗せると調味液は不足すると思われる程の少量である。
しかし、実際は、中華のお店で出るような「冷し中華」の調味液より、かなり濃い状態のものが入っていた。もし、きゅうり、錦糸卵、焼き豚、などをたくさん乗せるならば、さらに醸造酢などを追加してみると良いかもしれない。それに、からしを溶き入れるのもよい。あるいは、冷たいのがよければ、氷を幾つか入れておいても良い。そういう自由度があり、個別の趣向に十分対応できる調味液の濃さに仕上げてある。かつて、このような即席の「冷し中華」が無かったかといえば、そんなことは無い。しかし、ゴマ味で出来た酢の物を食べているような食感で、温かくないから「冷しラーメン」と呼ぶ、といった感じであった。そういう限界を感じた時代からすれば、凄まじい進化を遂げたと言うほかない。
お味は、さすがにマルちゃんだけのことはあり、どこかで食べたことがあるような印象があるものの、それがまた格別に美味しさを引き立てる。笊で麺を冷やす作業が面倒だという人もいるかもしれないが、自分なりの味の拡張方法つまり、酢を加えるとか、少し氷で薄めるとか、辛味噌を加えるなど、好きな組み合わせを見つけることで、きっと好きになれる筈である。これでまた数百億食を販売するマルちゃん正麺シリーズに貢献する製品が加わった。マルちゃん正麺の醤油、味噌、塩、豚骨、これらは、少々伝統的で親しみやすい感じを受けたが、この冷し中華は、かなり本格的で進歩的なお味と言えよう。これなら、「嘘だと思ったら食べてみてください」と自信を持って宣伝できるはずである。
ではこちら
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