2013/05/24

ディスカバリー11

  古い妙な話ばかりだと思われるかもしれないが、このディスカバリー・シリーズは、タイトルの通り、当時を思い出して記憶を確かめる為に設けたページである。オーディオ関係は、今でも傍に製品があるので、実物を眺めながら記憶をたどる事が出来るが、映像関係のテーマの大半は、25~30年ぐらい前のリバーサルフイルムをデジタル化しているため、記憶もフイルムの状態と酷似している。原版は35mm版から6x6、4x5と様々で、撮影時期もまちまちだけど、おおむね満足できる保存状態なのが確認できている。やはり、35mmより6x6、4x5の方が状態は優れている。そこに、云々かんぬんと色々と能書きを書いているが、それによって記憶を辿っているだけである。また、フイルムからデジタル化したものは、当時使わなかった写真なので、必然的にコアな写真になっている。少し前に1インチVTRやEDベータの事を書いたが、VTRとして外せないのが、この色差方式のVTRである。

  一般的にNTSCのカメラ内部の信号は、同期信号、白黒信号と色信号の3信号で成り立っている。同期信号は、一見すると幾つかの単一な周波数で構成されている。しかし、それらは、画面を構成したり、画面を送るための周波数であったり、また、色を搬送する周波数まで、各周波数は全て相関性を持ち整然と並んでいる。一方映像の中味は、カメラ撮像管から得られる R,G,B 信号にガンマ補正、輪郭補償、リニアマトリクスなどを加えた後に、まず、輝度信号を生成する。輝度信号をYとすると Y=0.2988R+0.5868G+0.1144B の割合で生成される。一方の色信号は、RGBの其々の信号からマトリクス演算をして、I信号とQ信号を生成し、其々を3.579545MHzで平衡変調したものを色信号としている。色信号はクロマ信号(C信号)とも呼ばれ、Y信号にそれを加えることによってNTSC信号になる。

 補足:CIE色度図上のシアン→オレンジ系をI軸、それと交差するマゼンタ→青系をQ軸として扱う。I軸とQ軸が交差する部分を白(0,0)とし、これは、R-Y軸とB-Y軸に対して33度ずれているだけで簡単に変換可能である。I軸の信号の大きさは、I=0.736(R-Y)-0.268(B-Y)、Q軸の信号の大きさは、Q=0.478(R-Y)+0.413(B-Y) となる。また、白色は、色温度を6774KとするとCIE色度図上では、x=0.310 y=0.316になる。各原色をx,y座標で調べると、Rは(x=0.67、y=0.33)、Gは(x=0.21、y=0.71)、Bは(x=0.14、y=0.08) となっている。この3点の座標で表される範囲が「カラー放送の色再現範囲」ということになる。また、人の目は実験的に、輝度信号に比べて、色に関しては解像度が低く、輝度信号を6MHzとすると色信号は1.5MHz程度で良いとされている。


     カメラの出力つまりNTSC信号がVTRへ入ると、逆にYとCに分離して、そのクロマ信号の3.579545MHzを復調してI信号とQ信号を得る。YとIQをさらにマトリクス演算してY、R-Y、B-Y の3信号を得る。Yはそのまま変調をしてRECアンプに入り記録する。R-Y、B-Y の2信号は、CTCM という「R-Y、B-Y をそれぞれ1/2に時間軸圧縮してYとのタイミングのため2.25MHzのバーストを加えた」信号を生成し、少し遅れて2つ目のRECアンプに送る。この圧縮時間分の遅れは、再生時に戻すとして、YとCTCMを別々のヘッドを使い、別のトラックに記録する。これによって、1インチハイバンドVTRに比べ色信号の解像力、色再現性、色S/Nなどが改善されるというものである。

  この輝度信号と色差信号を別々のトラックに記録する方法はソニーのベーターカムが先に商品化し、その後それは放送用取材VTRの世界のデファクトとなった。これによって、カメラとVTRは直接色差信号(Y、R-Y、B-Y) で繋げるようになったのである。この方法は、その後デジタルになっても変わらなかった。今日紹介する松下電気産業㈱とNHK技研で共同開発したMⅡフォーマットのVTRは、ソウルオリンピック放送でNHKが大量採用した後、事実上姿を消した。MⅡフォーマットでは、ダイナミックトラッキングを含む全機能を搭載したAU-650が代表的だが、今日はフィールド制作用として用意された可搬型VTR AU-550である。

  上の写真は、MⅡフォーマットVTRのメカニズムを取り出して撮影したもの。VHS VTRに比べて回転ドラムに巻き付くテープの角度はUmatic並に深い。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%211254&app=WordPdf

補足:この頃は、テープは放送用と明記しながらナショナル・ブランド。一方、放送用機材は、松下電器産業、松下通信工業共に当時は海外でのブランドである「パナソニック」を使用。