不況時代は、優れた商品が生まれやすい土壌になる。その環境で、即席麺業界にも生麺と、区別がつかない程の食感の即席麺になる画期的な技術が生まれた。それが、袋麺市場が再び脚光を浴びる背景になった。社会がデフレ状況なことも手伝って、大きな売り上げに繋がったと言われている。また、これからも益々多種多様な商品開発を促しながら、活況を呈してゆくに違いない。確かに、麺が画期的に美味しいと醤油、味噌、豚骨、塩までなら、歴史的背景や実績からも、誰でもそこそこ売れる商品に成長すると予想できるが、果たして「冷し中華」はどうか、経験不足という難しさもあって、期待薄の商品だったと言えよう。それでも、マルちゃんの確かな味作りに、発売後すぐに品薄状態を引き起こし、その勢いは留まる所を知らず、ぐんぐん売り上げを伸ばしてきたようだ。
本来、「冷し中華」は、お店によっても違うが、胡瓜、しいたけ、たけのこ、焼豚、錦糸卵、くらげ、鶏肉などトッピングやその味付けに手間がかかり、客は「冷し中華は店へ訪れて口にするもの」という認識が高かった。また、一方で手軽な袋麺商品として存在しなかったわけではないが、メーカー側としては、本気で取り組む理由が無かったし、ユーザとしても調理が面倒として敬遠しがちであった。何かきっかけを掴むまでは、メーカーとしても、どのような形で「冷し中華」を市場導入すればよいか苦しんでいたと思われる。しかし、市場原理の原点でもあるユーザーの声を分析してみると、「麺とつゆ」という、基本的な具材の品位が高いとか、つゆが格別に美味しいとか特徴があれば、そこにユーザーの好みで「独自性を編出す可能性」が秘められていることが分かったのである。
その代表格であるマルちゃん正麺の「冷し中華」は、早々に市場投入され、今や食べる時の外気温まで言及されてきた。「暑くても、涼しく」ても、この「冷し中華」は美味しい。嘘だと思ったら食べてみてください!と言うメッセージからなのであろうか。今日は雨が降っているし「涼しいから、冷し中華」にしようと、すでに条件反射になってはまってしまったと言う人も少なくない。しかし、「冷し中華」熱といては何時か「冷める」こともある。競争の無い市場では、まれに商品が徐々に廃れてしまうことがあるからで、やはり、「美味しい商品」を改めて認識させられるには、比較対象商品がいくつか存在しなければならない。市場は、そこはかとなく多様な趣向を隠し持っていて、その比較されるべき商品が登場することを密かに望んでいる。
そこで、登場せざる終えなかったのが日清の「ラ王の冷し中華」である。日清は、生麺に近い即席めんに、更に磨きを掛けて「つるつる で しこしこ」の麺に「しょうゆだれ」で用意した。わざわざ、「しょうゆだれ」と名乗っていることから、今後は、「ごまだれ」も提供されるかもしれない。それも、ファンの楽しみなので、出来るだけ早く商品化してもらいたい。さて、その日清のラ王「しょうゆだれの冷し中華」は、マルちゃん正麺の「冷し中華」とは明らかに違う。麺の力強さは日清独自のもので、つるつるとした食感は好感が持てる。つゆの味は、主に醤油、酢、辛味、砂糖、ごま油、その他の香味だが、とに「ラ王独特のごま油」が中華風を演出し食欲をそそる。ここがラ王の特徴なのだが、その一点に好き嫌いが存在する可能性がある。このあたりがマルちゃん正麺の「冷し中華」の大人しさとは大きな違いとなっている。
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