2013/07/19

鯛めしの素

   鯛の切り身をご飯の上に載せた状態を「鯛めし」という。最も印象的なのは、生の鯛の切り身をご飯の上に広げ、山葵と一緒に出汁で戴くというのが思い出される。おそらく、松山とか宇和島、瀬戸内では、そんな食べ方をすると記憶している。関東あたりでは、焼き鯛を出汁と一緒に炊き込むのが一般的だ。鯛をご飯と一緒に炊き込むには、魚を焼いて、炊き込めばすぐに完成するものではない。小骨など幾つか面倒な前加工が存在する。しかし、頭の部分を取り除いてしまうと、味に深みが無くなるし、かといって頭の部分は、鯛石とか、目玉など、いくら火を通しても柔らかくならず、食べられない部分も多い。そんなことが結構面倒なので、家庭で頻繁に作られるものではない。

  しかし、この「炊き込みご飯」風の「鯛めし」は、間違いなく魚好きに喜ばれ、美味しいお店があれば、わざわざ食べに出向きたいと思う程である。そうそう、浜松町の和食の店「本濱」まで食べに行ったこともある。思い起こせば、また「食いてえ~」と思うわけだが、ころっと!そんなことも忘れ去っていた。そんな矢先に、贈答品として、「うどんとセットになった鯛めしの素」を頂戴したので紹介したい。最初は、うどんと鯛って?何よと、うどんの上に鯛めしの素を乗せて、あたかも、京都の「にしんそば」さながらの、「鯛うどん」にでもするのかと思ったほどである。箱の中に「うどんと鯛めしの素」が並んだ姿を見ながら、ひょっとしたら、それって、すごく美味しいかもしれないとまで本気で考えた。

  製造販売しているメーカーからすれば、「とんでもねえよ~」と思うかもしれないが、眺めていると、なんとなく美味そうだなと徐々に本気になっていくものである。そうやって、心の中で勝手にイメージが出来上がってしまう前に、そんな妄想を掻き消す様に、「鯛めしの素」の箱をひっくり返し、早速その手順に沿って作ってみることにする。鯛めしの素の箱には、天然小鯛を特殊製法で柔らかくしたパックと、それに合わせる出汁のパックが同梱されている。手順は、お米2合を洗米し、通常の割合で水を加えた後、その中に、出汁パックを入れる。そしてまるごとの天然小鯛を上に置く。30分ほど出汁に漬けるため放置した後、炊飯モードで炊き上げるだけでよい。

  こういう「炊き込みご飯」の出汁とか醤油は、炊き上がる時に蒸気と一緒に美味しそうな薫りを放ってくれる。その中に、いつもと違う「出汁の薫りから鯛の薫りへ変化」し、それが渾然一体となって、無性に腹が減ってくる。この薫りが、小豆島産の丸大豆醤油と、枕崎産の鰹節、北海道産の昆布を合わせた出汁の薫りなのかと興奮する。うーむ、美味そうだ。そこがまた、日本人に生まれてよかったと思う瞬間でもあるのだが、我慢が出来なくなる前に、せっせとお新香とか、味噌汁を用意したいものである。炊き込みご飯全般として、たくさんのおかずは不要で、シンプルに3点ほどでまとめたい。炊き上がると、和食亭のカウンターに座っているような薫りに包まれている。鯛の目玉や鯛石を取り除いてから鯛を満遍なくほぐして、ご飯と混ぜて戴くことにしたい。うー、美味いわ。
ではこちら
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