2014/05/09

美味しい即席とん汁とかに汁

  和食の料理人の言葉として、「新鮮で優れた素材と、いい道具を使って調理すれば、美味しい料理が出来る」と漏らすことがある。それも「和食の王道」という責任の範疇かもしれないが、口にするものは、食材を使いこなす技と最終的な評価を下す達人が、厳しい感性を振うことで、美味しさは、万人に好まれる方向に収束するという側面も忘れてはならない。そこに調理責任者の価値感が存在しているのである。いわゆる「太鼓判を押す」とか、「折り紙をつけたり」するのは、そういう「研ぎ澄まされた感性が納得する」からといえる。

  随分前に、鮨屋で提供されるような「お椀物を即席化した商品」を紹介したことがある。その商品化には、拘る監修者が介在していて、背後で自慢そうに微笑む姿が印象的であった。商品自体は、具材の微妙な食感までも再現し、味噌は真似のできない独自性が打ち出され、見事だと思った。それは、やはり簡単に太刀打ち出来ない「長期に渡る試行錯誤」を裏付ける「合わせ味噌」の成果だと推察される。私のように、全く味噌に関する認識のない者にとっては、感動以外の何物でもなかった。うーむ、旨いな!といった感じである。そういう、やや興奮気味の興味が、即席みそ汁という分野を今更に見直そうとしているのである。

  そんな感想を並べても何も創作意欲は沸かないが、最近さらに興味を持ったのは「とん汁」と「かに汁」である。とん汁の方は、上野とんかつ御三家の最古参の「本家 ぽん田」四代目の島田良彦氏の監修である。創業明治38年からの拘りが息づいた労作の即席版といえよう。他方のかに汁は、信州一味噌 創業1662年の老舗味噌メーカーの創作味噌汁である。まさに、ずわいがに「生タイプ」を使用して、蟹の旨味と磯の香りを引きたてた作品である。いずれも、開封してお湯を注ぎ、それが再現されるまでに気持ちが高ぶる逸品である。ただ、この具の多い「とん汁」と「かに汁」をどのような料理に合わせればよいのだろうか迷ってしまう。

 昔は、とんかつ屋でとん汁は、ごく普通に提供されることが多かった。しかし、今はしじみ汁であったり、その赤だしのしじみ汁であったりと、お店によって提供されるお椀物は異なる。一般的にとん汁は、豚肉、大根、人参、玉葱、蒟蒻、ごぼう、椎茸、ネギなどが入った味噌汁である。それ自体で、お腹が満足することもあり、とんかつと一緒に出されると胸がいっぱいになる。関西で育った私にとって、とん汁とかけんちん汁は比較的に馴染みが薄いので、写真撮影用として、何と合わせるか?困ったのだが、ご飯と牛肉のしぐれ煮風の肉豆腐とを作って合せてみた。
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