伏見稲荷の名物にしたいという背景には、様々な思い入れがあった。お店の代表商品の1つのようだが、「まる」のコンセプトに将来の見通しを鮮明にすると言う気持ちを込めて、「名物」として自ら名乗っている。それが、この「まるもち」である。ただ、名物になるためには、少々時間がかかるかもしれない。粒餡やみたらしをお餅で丸く包み、タコ焼き器の様な振動するプレートの上で転がしながら、表面をカリッと焼き上げた餅菓子である。これからの時期、秋から冬にかけて、この稲荷神社の総本山伏見稲荷大社の千本鳥居の奥に「幻想的な世界」を覗きながら、このまるもちの焼きたてを戴くと、なるほど、凛とした空気にお狐様に話しかけられた様な響きが伝わってくるから不思議だ。
お店は、京阪本線の伏見稲荷駅で降りて府道119号を伏見稲荷大社へ向かって歩くと左側にある。すると、奈良線の稲荷駅から大社を往復する足向きには、お店の前を通ることは出来ない。でも、まるもちは、様々な大型お土産店で時々見かけることが出来る。ところで、全国的に調べてみると、このような形状や構造と良く似た餅は多いが、外見の光沢を伴うまだらな模様は独自性が高く、この自然の模様柄は意外に印象深い。
これは、たこ焼き風に作られた餡子焼きではなく、発展型の饅頭でもなく、あくまで丸い形をしたお餅である。やや表面に光沢感を伴った硬質感があり、カリッと焼かれていることが分かる。中に、粒餡子が封入された「茶のまだら」と、みたらしが封入された「赤のまだら」が用意されている。中に封入されている餡子は、さっぱりとした京都老舗仕上げであり、他方のみたらしは少し濃いめで美味しさを実感できる寒天仕上げと言えよう。
初めて見た時は、形状や色彩の物珍しさが先に立ち「不可思議な想像」を掻き立てる。そして口に頬張ってみると、意外にもその洗練された美味しさに魅了される。外形寸法から来る印象よりも満腹感は早く来る。しかも、腹もちも良く、一度に何個も食べられない。しかし、時間が経つと餅である事を思わせる固さが出てくるので、オーブンなどで温め直す。この2度焼きとも言える作業で、表面の光沢部分は固さを増すが、内側は懲りが解れたような柔らかさが戻ってくる。この2種に薫る味わい深いお味には、年配の人が好む上品さが漂うが、せっかくの美味しさに、餅の表面の硬さが障壁になる可能性があるので、出来るだけ出来立てを早めに楽しんでもらいたい。
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