以前、金沢の「浅田屋の栗ご飯の素」を紹介したことがある。一口々を噛み締めながら、その出汁の美味しさに、強く心が魅かれてしまった。さらに、ご飯を少なめにして炊き上げると、出汁とご飯の間に「おこげ」が出来るが、これがまた、とっても美味しかったという印象で、時々その記憶が呼び起こされる。こういう好印象は、必ず同じ会社の同系列の商品を試してみたくなるものである。そこで、今回は「あさりご飯の素」を用意してみた。あさりは、元々「美味しい出汁が出る食材」なので、炊き込みご飯の素材としては「最高峰」といえるが、しかし、あさりの旨みを引き立てるのは、それより薄味で質の高い出汁を用意しなければならないし、加える生姜も邪魔をしないように控え気味にしたい。このあたりは、素人の創作ではバランスが難しい。
浅田屋の出汁の美味しさは、その水に秘密があると思われるかもしれない。それは、「薄めずに使う」という、商品としては、味に一切の妥協をせずに客に届けるという、レベルの高い「製造ポリシー」によって実現されているからである。お米に吸わせて、出汁の美味しさを引き立てるのは、やはり、それに使う水が一番重要な役割を果たすと考えられる。しかし、普通は、美味しい水なら、どこにでも売られているし、いつもご飯を炊くには「市販の美味しい水」を使うという人も少なくない。しかし、製造者は、その美味しい水を使っても、出汁の味を製造時の美味しさに復元するのは難しいことを知っているのである。そのような厳密ともいえる「製造技術」を取り扱うことで、その拘りの図り知れない奥深さを知り、益々美味しさに対する期待が膨らむのである。
料理が得意で、炊き込みご飯ならちょこちょこ作るという人にとっては、この出汁の味とか、使われている素材とか、製造プロセス等は、かなり興味があるに違いない。しかし、残念なことに少々研究したところで、やはり、それは、何時まで経っても、何度食べても、購入しなければ手に入らない味であることを認識するだけのようだ。それは、表記によると[=素材ごとに味付けを変えた「料亭だし」創業萬治二年(1659年)金沢の料亭浅田屋が作った、こだわりの炊き込みご飯の素=]であるという、そんな背景によるものと思われる。
栗ご飯も印象に残ったが、「松茸ご飯」も素晴らしいお味に仕上げられていた。これはもう小金を使って食べられる食事の領域を超えている。そして、今日の「あさりご飯」も、それに並んで「美味しい」炊き込みご飯が出来る。しかも、誰が作っても、同じ美味しさが引き出せるところが優れているのである。やはり、この美味しさは、「出汁を極めた味」と実感する。栗ご飯と比べると、あさりの方は、具と出汁が一緒にパッケージされているので、あさりの味が全て出汁に溶け出して、あさりは身がしおれている。そのあたりの食感を改善するには、炊飯前に「缶詰のあさり」を追加すると生々しさが増してよい。炊き込みご飯という、一種の食材大量収穫時の大量消費の手段の一つとして成長してきた歴史が、出汁によって蘇ってくるところが素晴らしいと思える。
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