これは、世田谷区奥沢にあるフェアトレードカンパニー㈱が販売するチョコレートのことである。といっても、パッケージデザインに魅かれて初めて手に取ってみた。そのキャッチフレーズは「食べる人においしさを、つくる人にやさしさを」という。うーむ、今時そんなことに触れるとは 「いったい、どうゆこと?」なのか。そんな僅かなことに後ろ髪を引かれ、その場を立ち去るのに口惜しく、7枚ほど買ってきた。1枚350円で、なかなか上等な値付けがされている。パッケージ・デザインとキャッチフレーズの摩訶不思議な様相と、このフェアトレードという、あくまで公正取引を印象付ける言葉も気になって、きっと何かある筈だと、確信にも似た興味と、知りたいという願望が沸々とわき上がってきたのである。
そのチョコレートには、きっと作る人と食べた人にしか分からないお値打ちが隠されているのだろう。その鍵が「食べる人においしさを、つくる人にやさしさを」の言葉の中にある。それには、人一倍選りすぐった素材を使い、時間とか、手間とかをじっくり掛けて、結果的にそのことが美味しさに繋がって、誰でも納得できる価格で提供されているということなのである。さらに、もう1つ、パッケージの上に印刷された、「People Tree 」とは何か。それは、「環境を重んじる」同社のブランドのようだ。これが意味することは、森を壊さない、水を汚さない、空気を汚さない、人と命を守る、という4つの「環境ポリシー」を定めているところだ。さらに、それは、あくまで途上国の生産者たちが、「コミュニティーの環境を守りながら生産したもの」をフェアトレードするという崇高な理念が織り込まれているらしい。
もちろん、その会社は取引や貿易を展開するだけではない。結局、オーガニックな素材を大切に育て、生産、加工、保管、流通などの過程で、環境や社会の基準を満たす物作りにかかわり、それを通して、途上国の人たちが継続的に自らの力で自立発展できる仕組みを支援していく行動なのである。従って、取り扱う分野も、衣料品、雑貨、食品など様々にジャンルを広げており、それも世界的に支持されてきたようだ。話をチョコレート戻すと、カカオ豆はボリビアの小規模農家によって有機農法で生産されたもの。黒砂糖はフィリピンで作られたもの。それらをスイスの工場に送り、温度に敏感に反応するココアバターだけを使って作られる。その製造工程には、一般的な乳化剤(水分と油分を混合するために使う添加物)を一切使わずに「練り」だけで滑らかな口溶けを実現しているという、じっくり時間と手間が掛けられているようだ。したがって、今頃の寒い時期にしか販売できないチョコレートになる。
調べているうちに、このフェアトレードカンパニー㈱の話は、何年か前にテレビ番組で紹介されたことを思い出した。チョコレートにまでその取り扱いを広げたことに、大いなる躍進を感じさせる。厳しい世界基準や環境機関の認証を得るなど、様々な拘りの中で生まれた商品だけのことはあり、口溶けが独特の食感のチョコレートで、味や香りがすぐに舌に伝わってくる。最初は、これって大昔(幼いころ)に食べたことがあると思わせる舌触りで、粘らずすーっと溶けていく様子を感じながら、同時に微妙な美味しさがすぐに伝わってくる。7種の組み合わせた素材の美味しさが、ストレートに伝わってくるのが、実に気分がよい。口に運ぶ回数に比例して、じんわりと自分がその美味しさの虜になっていくのがわかる。くどくど説明が無くても、寒くなると素直に食べたくなるチョコレートだとった。
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