監督の意向と演者の感性が、高い次元で融合したとき映画作りの喜びは最高潮に達し、現場は心地よい緊張感に包まれる。そして、それがそのままスクリーンに反映する。視聴者に伝えたい事をどう映像化するか、限られた予算、撮影期間、キャスティング等の資源の中で、監督の価値観に興味が集中する。もちろん監督には、それぞれ得意分野があったり、作品ごと思い入れがあるに違いない。今日は、デビッド・ エアー監督の2作品を連続で観てきた。
フューリー(FURY=激しい怒り)とペイントされた76mm砲を備えたシャーマン戦車(当時の米軍戦車)とその乗組員5人の活躍を描いた実話。観る者は、ヨーロッパの第二次世界大戦末期のドイツとの棲ざまじい戦場にタイムトラベルさせられる。5人の中には、新兵として副操縦士が加入してくるが、彼に話しかけることで観る者に「闘う男の誇りとその意義」を伝えている。ここが、監督の考えを色濃く反映した信念と言えよう。5人の乗組員達は、リーダーの「冷静な激しい怒り」に共感し、それを原動力にした「捨て身の作戦」に挑み、辛うじて勝利を物にする。そこでは、「戦士の洗練された哲学」が脈々と伝わってくる。内容も申し分なく痺れるくらい素晴らしいが、さすが軍隊で経験のある監督ならではの演出。カメラワークも従来にないアングルを創出し、格好良いシーンを次々と繰り出してくる。よくぞこんな「素晴らしい作品を作ってくれた」と尊敬の念を抱いだいてしまう作品だった。
「フューリー」の公式ホームページはこちら http://fury-movie.jp/
デビッド・ エアー監督よりアーノルド・シュワルツェネッガーが色濃くスクリーンに反映したと思わせるほど、監督の影が薄くなってしまった気がする。「ミステリアスなアクション映画」だがストーリーはシンプルで分かりやすい。たとえ優れた才能のある監督でも、縦続けに素晴らしい映画を量産するのは難しいかもしれない。もうここは、「シュワちゃんを観に行きたい」と思っている人達のために、彼自身が「俺、少し体が全体にゆるんだけど、まだまだやれるよ、期待してほしい」と宣伝しているような映画になっている。したがって、あまり「深いことを考えるような人」には、少々がっかりさせられるかもしれない。ただ、戦闘シーンは棲ざまじい破壊力を競うシーンばかりで、スカッとしたい人には最高といえそうだ。デビッド・ エアー監督の経験がプロフェッショナルな火器の使い方に活かされているようだ。
「サボタージュ」の公式ホームページはこちら http://www.sabotage-movie.jp/