2015/01/20

俺のそば

  最近、「俺の・・・」という名の「立ち食いレストラン」が流行っている。それは度々テレビで紹介されるので良く承知しているが、知らず知らずのうちに、イタリアン、フレンチのみならず、割烹、やきとり、焼肉など、様々に店舗を増やしてきた。それにしても立ち食いは、ちょっと胃腸に負担が掛かる感じがあって苦手だし、しかも、長蛇の列に並んでまで食べたいとは思わないし、テレビの中の話と割り切っていた。テレビで、いくらオーバーな「美味しい表現」をしても、所詮何も伝わることもなく、視聴者は無責任な「やらせか?」と捉えているかもしれない。しかし、テレビの中の人々は「安くて美味しい」から並ぶわけで、そこだけは「情報として」少し興味を引きずっていた。

  先日、銀座の数寄屋橋交差点のソニービルへ寄ってきた。4階あたりまで昇ってみたが「うーっ、何と薄っぺらい展示群か!」何とかならない?と思いながら早々に降りてきた、行き場のない想いで迷っていたら、C1出口の地下途中で「俺のそば」を見つけた。首を傾げながら二の足を踏んだが、ものは試しだと意を決して、表の看板を眺める。もり蕎麦は、凄く大盛りで、おまけに大量のねぎが載せられて何と300円、ぐっと安い感じ。蕎麦は少し太めで茶色をした田舎そば風だ。お品書きの中に穴子の天ぷらがあった。もちろん、注文を受けてから穴子を裂いて、衣を浸けて揚げるだけだが、2尾も付いて500円とこちらも超割安価格である。


 ルールも知らず入店。「すんません、どうすれば?」と聞くと、お盆、箸、お冷を持って列に並んで!と指示され、品書きを確認している暇もなく次々と順番が回って来る。穴子は、しばし時間がかかるせいか、後で席まで持ってきてくれた。どうして、そんなに蕎麦が早いのか不明だが、蕎麦はなかなか風味があって美味しい。そばつゆは、「ごま油」が最初から加えてあり、香ばしさを出しているのかもしれないが、人によっては嫌悪感が先行するかもしれない。私としては、不味くは思わないが、山葵、一味等と同様、選択肢の1つにしてほしかった。穴子は、別皿に塩と一緒にのってくる。天つゆが付いてこないところがコストダウンである。こういう場合は掛けを頼んでおきたい。しかし、この穴子が、とても新鮮で美味しい。2尾といっても小ぶりだが、それがまた美味しさの鍵と言えそうだ。

  恐らく、蕎麦を口にするきっかけは、若者から年配者まで千差万別で、駅蕎麦のように素早く口に出来ることや、価格が安い割には満足感があるという C/P派から、趣味的に昔ながらの老舗の味に舌鼓みを打ち、その雰囲気の中で、ちびちびと時間を過ごすことに重点を置く呑酒派も今だ健在だと思う。しかし、この「俺のそば」のように、定番の品書きというより、定食屋のような、その日のお薦め献立表的なメニューがあった方が、楽しいのである。みんな同じものを食べながら、今日は、これが安いから嬉しい。また、たくさん入荷したから安く提供します、じゃ食べてみようかなと、あたかも、まかない昼食のように柔軟性を特徴とするのが新しいファスト蕎麦屋の形なのかもしれない。これは、神田まつや、日本橋室町等ではありえない要素といえよう。

補足:左がマリオン、道路を隔てて地下鉄銀座線 C1出口(右)。その階段を下がると左側にある。