2015/01/16

スプレータイプの醤油

  食事の塩分で最も身近に感じるのは、味噌とか醤油と言う印象がある。昔の記憶を手繰り寄せると、確かに、「減塩」と言う言葉が店頭に並び始めた頃は、味噌や醤油に、多くの塩分が含まれているのだと想像したものだ。しかし、当時は、その塩分のお陰で間接的にも、美味しくご飯を頂いていたわけで、あたかも毒を盛っていたような表記や表現には賛同できない。例えば醤油に限ってみても、減塩醤油とか薄塩醤油とか表示されても、塩分と醤油の旨味は微妙に絡み合っていて、美味しく感じるための製造には、多くの工夫が凝らされている。もちろん、塩分が全く無ければ、誰も使わないだろう。そこには、醤油の味に、「人それぞれ塩に対する感度の違い」があるからだ。

  醤油は大豆、小麦、塩を原料とし、麹菌、乳酸菌、酵母による発酵過程を経て作られるため、含まれる、たんぱく質、アミノ酸、ビタミン、ミネラル等、広範囲な成分を豊富に含んで栄養価は高い。また、他にも食欲を高める働きや、腸内の大腸菌などに対する殺菌力もあると言われている。

  醤油は、調味料としてJAS規格で種類が規定されている。地域性もあり、その分類に含まれない製品も多いが、おおよそ、「しろ、濃口、薄口、溜り、再仕込」に分けられている。なのに、いつしか趣向品の領域に広がリを見せてきた。それは、煮つけの醤油は一升瓶に入った「濃口」の量産品でよいが、刺身には、「溜り」を発展させた刺身醤油が使われる。漬物には、「濃口」に昆布を溶かし込んだ自作の昆布醤油等もお薦めだ。卵ご飯にも市場には専用の醤油がいくつか存在する。このように、美味しさの追及の仕方に趣向が多く含まれてきたからだ。

  醤油に含まれる「塩に対する感度の違い」は、昔から、その使い方に良く現れてきた。一升瓶に入った醤油を醤油差しに移され、さらに、小皿に少量抽出される。その小皿の醤油に食材を適宜少量浸けて口に運ぶという繊細な作業である。これを正しく使いこなしてこそ和食を美味しく楽しめるという理屈である。しかし、高度成長時代には、一般家庭で醤油差しから直接おかずに「ぶっかける」ような使い方が一般化した。それが、この醤油や味噌に含まれる塩が高血圧や胃癌の元だと言いがかりをつけられ、いずれも減塩に進むことになっていったようだ。

  最近、スプレー式のSOY SAUCE (スプレータイプ) が各社から次々と発売されている。このスプレータイプの醤油も絶対量を減らす目的だが、どうも、日本文化や和食を理解できない外国人には使いよさそうで、評判がいいようだ。もちろん、減塩を希望する人にも、小皿の醤油に食材を適宜少量浸けて口に運ぶという作業が苦手な人には最適かもしれない。さらに、ミストを放出するので醤油の絶対量が少ない割には、香りが良くて、塩相当量は少ないという結果に繋がる。一種のソースとして捉えれば、何の抵抗もないが、自分には半ば邪道と言う印象が拭えなかった。

  実際使ってみると、凄く具合が良く、まるっきり印象が変わってしまった。それは、使い方自体にバリエーションがあると言うことだ。動かすと形が崩れてしまうような食材には、物凄く効果的であることが分かったのである。確かに、もはや日本文化に溶け込み、優れた醤油噴霧器となっている。ただ、この容器は、醤油自体を減塩にしないと、乾燥が続いて目詰まりが起こりやすいと言うのもあるようだ。
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