前回の続きになる→ もう1つの謎は「お麩(ふ)」であった。どうして、このような品物が同梱されていたか不明だが、きっと「自ら美味しいと感じる物」を共有してほしいという気持ちの現われだと思う。それは、ある意味自分の感性を理解してほしいということなのだが、その食べ物に、本人の大らかな性格の一端が隠されている。パッケージは、油麩とたれがセットになっていて、別に用意する材料は、玉葱のスライス、卵、食用油だけで、名称は「油麩丼たれ付セット」という。
忙しい仕事の合間に、短時間で簡単に作れて栄養バランスに優れ?、ご飯の上にのせて丼として、体に流し込むように搔きこむことができるセットである。おまけに、極めてローコストであるようだ。ご飯を一番美味しく感じるのは、空腹感が1~2度訪れた後である。そのタイミングで作り始めて、手間が掛からず、ちょうどよい按配で3度目の空腹感を満足させる。簡単に仕上がるので、ご飯がとても美味しいと感じられるタイミングなのである。
その油麩の手軽さと美味しさを知ることで、改めて麩の力強さを身近に感じることが出来る。さらに、麩の様々な使い方に応用が出来る筈で、たとえば、関西で言うところのうどんの「御揚げ」の代わりであったり、「油揚げ」の代わりに味噌汁にとか、あるいは、そばの上に乗せる具として、一口大に裁断して、甘辛く味付けしてしまえば、何処でも美味しくいただける。「油麩丼たれ付セット」でなくても、油麩さえあれば、出汁で戻した使い方は幅広いといえよう。それを示唆するのが、単独の袋に入った「油麩」であった。
油麩丼の作り方は、難しくない。麩を輪切りにしてお湯で戻しておく、玉葱を裁断しフライパンで透明になるまで炒める。2つを合わせて、出汁を加えて1~2分煮込む。出汁が行き渡った所で卵を加えて、黄身を少し崩して余熱で火を通し、ご飯の上に乗せる。ちょうど要領は玉子丼、親子丼に近い。したがって、最後に加える香辛料としては山椒が良いかもしれない。付け合せは、高級感を滲ませる奈良漬がよい。
彼の意図は、まずパッケージの裏に書かれた指示どおり「あぶら麩丼」を試してみよ、そして「その美味しさを知った上で、自分で出汁を作り、あるいは好みの出汁を購入して美味しく戴く方法を創作するように」といったところかもしれない。また、昔々、幼いころは「お麩」を食事の中に取り込んでいた時期もある(吸い物や丼など)。その懐かしさと、東北の土地柄に残された古き良き日本の食の姿を伝えたかったのではないだろうか。
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P.S. あと、鯖の水煮缶が2缶残ってしまった。この油麩丼のご飯に、鯖の水煮缶を使って炊き込みご飯にすることを考えてみたが、それも美味しいかもしれない。