2015/03/17

タラバガニ・ラーメン

 おおっと、店頭でタラバガニという文字が目に入ってきた。しかも、醤油味と味噌味の二種類が並んでいる。その袋の裏には、こんな記述がった。それを、そのまま引用すると→「四季折々の味を生み出す、雄大なオホーツク海から漁獲された新鮮なタラバガニの風味を、当社独自の製法により生ラーメンに練り込み、より一層のコシと歯ごたえを生みだすため、四~五日間熟成乾燥させた”タラバガニラーメン”をぜひご賞味ください。きっと、ほのかな北の海鮮の想い出と北海道ラーメンとの出逢いをご満悦いただけるでしょう。」とある。僅かなスペースに小さく書かれてはいるが、「流氷の浮かぶオホーツク海からの冷たく強い風と、その風に晒されている麺」が鮮明にイメージ出来てしまった。そんな、厳しい環境で生み出されるラーメンの、心のこもったメッセージを受け取ってしまったのである。

 味噌ラーメンに蟹の足が数本入っているとか、あるいは蟹缶から取り出したような、ほぐし身が乗っているラーメンなら札幌のラーメン横丁にもある。しかし、タラバガニの風味をラーメンの麺に練り込み、その麺を四~五日も寒風の中で熟成乾燥させるとは、何としたテクニックなのだろう。そんな、旨い物を追求する心意気に感心する次第である。しかし、その寒風による熟成乾燥の作業は、先に紹介した「海老ラーメン」にも使われていて、それは北海道における麺製造の定石なのかもしれない。・・・そんなことをレジを待つ僅かな時間に考えていた。荒削りのパッケージ・デザインからは想像すらできない、拘りのある商品を手にしながら、それとなく家路を急いだ。

 少々無駄に思えるけれど、麺を茹でるための十分なお湯と、丼にスープを溶かすためのお湯は、いつも別々に沸かし、最後に合わせることにしている。それは、2つ分のたっぷりとしたのお湯を用意したとしても、麺に付着したかんすいや加工でんぷん、あるいは小麦粉や炭酸カルシウムの一部がスープに混ざるのを嫌うためだが、今日は、麺に練り込んだタラバガニの風味まで溶け出してしまうのではないかと心配し、裏に書かれている説明を追ってみた。でも、普段通りの別々の作り方で良いらしい。お湯が沸騰するまでは同じ鍋でもよいが、あつあつのまま口に運ぶスープに溜を作ったり、麺を箸でほぐしたり、鍋の中を泳がせたりする作業を考慮すると、どうしても麺とスープのお湯は別々に用意したい。

 何も具材を載せないで、そのまま頂くことを想像すると少々寂しい印象を受けるかもしれないが、最初の1杯は、むしろそうあるべきだと考えている。一方で、具材をたくさん載せると如何にも美味しそうに見えるが、味の濃い物が入ることでスープの味がどんどんぼけてくるし、折角慎重に試作を繰り返したスープを一刀両断に切り捨てるような結果になってしまう恐ろしさを避けたい。袋の裏には具材として、焼豚、メンマ、モヤシ、ゆで玉子、なると、のりなどが推奨されているが、スープへの影響の少ない具材を合わせるのが王道である。最初は、なると、わけぎ程度に抑えたい。もちろん、その後何を入れて食べても文句を言われる筋合いはないが、それほど最初のインパクトは重要と思えるのである。つまり、「ほのかな北の海鮮の想い出と北海道ラーメンとの出逢い」を感じるならば、薬味は少々でいかがだろうか。
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