2015/03/03

エクソダス 神と王

  「エクソダス」とは、「エジプトを出て行った人々」と言う意味である。「神と王」とは、出生を知らずに王の子ラムセス2世(王子)と一緒に育てられたモーゼ(青年期にヘブライ人であることを知らされる)この2人のことを指す。そのモーゼといえば、十戒、髭を蓄え、杖をつき、紅海を割って人々を通すという神の遣いとなる。その「出エジプト記」を描いた宗教色の強い映画をイメージしてしまうが、確かに、ストーリーは、その「出エジプト記」そのものなのだが、まったく宗教色を感じることも無く、むしろ、分かりやすい人間味あふれる物語に仕上げてあり、ラムセス2世とモーゼの戦いが現代風に描かれている。スッキリとした構図で分かりやすく気持ちが良い。


  壮大な映像美はかつて無いスケール感とともに観るものを圧倒する。古代エジプトの繁栄を余すところ無く表現されているセットなど、その構造物、建築物に留まらず、机の上に配置された天秤や装飾の品など、あるいは、キャストが身に着けている衣装や小道具など、それらが持つニュアンスまでも、正確に再現されている。きっと美術監督は古代エジプトに造詣が深いのだろう。また、そこで生活しているエジプト人、あるいは奴隷として働かされているヘブライ人の数も、半端ではない。それらの登場人物の顔つきまで微妙に異なる様子など、このような時代公証は、どのような手順で行われるのか興味深い。この映画に対する専門家の参考意見をまとめた映像がある。
https://www.youtube.com/watch?v=G8TL4N-l-uA

 エジプト兵士がヒッタイト族を攻撃する戦闘シーンなどは、まさに、「冒頭から度肝を抜かれてしまった」と言えるほどの壮大さで描かれている。登場人物も多く、それぞれが綿密な剣さばきと動作で、圧巻の映像を見せ付けた。そうかと思えば、ワニが船の乗組員を襲うシーンに始まる「10の奇跡(次々と起こる災い)」は、実写とVFXが見事に融合し、さすがに神の仕業のように、「とてつもない気持ちの悪さ」として再現されている。実際にそんなことが起こるかどうかわからないにしても、映像の中でラムセス2世を支える顧問は、それを神の仕業とすることも無く、あくまで科学的に証明しようとするところなど、まさに現代風といえるかもしれない。

 そのように曖昧な宗教色を排除した、拘りの映像美を持つリドリー・スコット監督独自の「十戒」作品ともとれるが、とにかく最後まで凄まじいスケール感に圧倒されてしまう。また、何処で撮影されたんだろうと思わせる美しい風景も見所の1つ。細かいところまで、見逃さず、もっと観たいと思うのは私だけではない筈だ。この作品に溢れている、巨大なスクリーンの映画館ならではの楽しみ方に、観終わった時の爽快感が心地よい。そんな1つ1つのシーンに必要な創造技術や美意識を感じさせてくれるところがこの巨匠の技なのだろう。久々に、分かりやすく素晴らしい映画を見せてもらった感じである。
予告編はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=SAb5kpVZD-w