今日も電車の中でデジタル一眼を持っている人を見かけました。最近は私が行くところで、必ずといっていいほどそんな人を見かけます。大切そうにお腹の前で抱える姿は、新しいテレビゲームを買ってもらった子供のように、幸福感に満ち溢れています。カメラはC社の最新型のようでしたが、持ち主の製造年月日はかなり古そうでした。 このような情景は最近のものです。昔は、このような場合、所有のカメラはライカやローライフレックスでした。初老のアクセサリーは舶来だったのです。
そんな格好のよい「ジジイ」に憧れた時代もあります。そして、古いものを大切に使うことは、紳士の条件でもありました。まさに「もったいない」の精神を継承するものです。撮影にもじっくり時間をかけて、1枚1枚丁寧に撮影していきます。「お父さんと行くと写真撮るのに時間がかかる」って家族から不満の声も上がります。そんな声には少しも耳を傾けず、ひたすらマイペース。「俺流」を貫くこと、これが紳士のプライドです。そして出来上がった写真は隅々までシャープそのもの、めがねを外してファインダーを覗く姿からは想像も出来ない出来栄えでした。
そんな古いイメージに想いを寄せながら、自分には、そんな演出できるカメラはないって思っていたら、このカメラを知らない人がいることを知りました。私が編集屋の駆け出しだったころ、ひたすら使った(強制的に使わされた)カメラです。カメラの「カ」の字も知らなかった私が、電球1つと、このカメラで戦ったのです。勿論、露出計はありません。全て勘です。勘とは、積み重なる経験から生まれる、やや、あいまいな感覚です。最初は見様、見真似です。絞りを16~22まで絞り、シャッターを開いたまま、電球を左右に一定のタイミングで移動させ、被写体に影ができないようにするのです。込み入った部品が乗った基板があると、スイッチバックのように電球を移動させます。光の量がどのエリアでも均一になるように工夫を凝らしました。これらは、今となっては、とてもよい経験になりました。
そのカメラを時たま持ち出すことがあります。勿論、露出計は必要ですが、太陽からの直接光を測定しておくだけなので、とても簡単です。そんな、忘れかけた「往年の名機」というか、暗箱にレンズをつけただけのカメラを被写体に選びました。撮影方法はデジタルカメラでも同じです。このカメラをご存知の方は、青春時代を懐かしく思い出しながらご覧ください。
前回と同じホルダです。
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