ああ、それって苦手なんだよって言う方もいらっしゃるだろう。若い女性には嫌う人もいる。でも本来大好きなはずだ。そういう抑圧された願望や欲求が歳を重ねることで、ついに弾けてしまった。そんな人に、デパート地下、食品売り場の傍でひっそりと隠れるように、口に出来るお店を紹介しよう。と、どこにでもありそうな話題で始めたが、昨日、今日、始めた甘味処には、そんな歳を重ねた人の居場所なんかあろう筈はない。やはり老舗という、客を外から隠す暖簾が必要なのだ。その代表格とも言うべき、老舗の京都和菓子店「鶴屋吉信」の高島屋進出店である。
老舗といっても京都の老舗は、さすがに古さが並外れている。ここは、何と創業200年である。京都には、都が出来てから、お店を出しているという老舗も少なくない筈だから、200年と言っても理屈では大したことはないのだが、それが、まさに日本の文化の誇りそのものといえる。人がまともに仕事ができる期間は約40年(年金最低基準期間)だから、その5倍にもなるのである。すると、戦後のお店や会社は、昨日、今日、始めた新参者に他ならない。また、文化のない新参者ほど、お金、お金という。他には何もこだわるものもなく、ただそれしか目的がないのだ。いや、そうなってしまうのかもしれない。
老舗とは、結果論でもある。職人がこだわりと誇りを持ち、時代が変わろうとも、「昨日と同じ、あるいは、昨日より良きものを作る」精神を継続させてきた結果なのだ。一方、客側も五感をフルに活用して「良きもの」をかぎ分ける能力と探究心が必要で、父、母から美味しいものを食べさせられ、周りにもそのようなものがすぐに手に届く環境があり、少しづつ分かってくるのである。そういう時間を重ねた者だけが、その価値を知ることになる。そこに、文化を感じることが出来るのであって、お金さえ出せば口に出来ると思っている人には、それを感じることは難しい。それでも、「食べて美味しい」だけでは何か足りないものがある、十分な満足感が得られない、そんな何かを求め続けると、この店にたどり着く、そんな和菓子店である。
もっとも、そんな和菓子修行をしなくても、一口で美味しさのすべてが分かってしまう品物もあるのだ。 今日は、この店の和菓子ではなく、併設の甘味処の一品から紹介する。少々お高いが、それなりの価値のあるものと、そうでないもの(あれ?)がある。それを自然に嗅ぎ分けてこそ文化人だ。決して外してはならない。
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