もう、昔みたいにたくさんは食べられないが、できるだけ美味しい食材を購入したいという年配の為のお店が流行っている。つい先日まで、企業の最前線で体を張って闘ってきた昭和20年代生まれの中高年達にとって、食事は戦闘機の空中給油と同じで、味わう必要もなく腹を満タンにしていればよかった。ところが、会社を定年退職してからは、毎日、自宅退屈男になってしまい、奥様について買い物に出かけたりする。すると、大してお腹も空いていないのに、ついつい、美味しそうなものに手が伸びるようになる。そこで、宇宙人のようにサンプルを口にして 「そ、そ、そうか、地球には、こんな美味いものがあったのか」と改めて気付くわけである。
調布には、パルコの地下1階にそのお店はある。全国の美味しいと言われる普段使いの食材を所狭しと並べてある。レトルトカレーは、数百種類以上ある売り場が用意され、まるで書籍棚のように並べられている。その他、味噌類、ドレッシング類、醤油類、等など珍しい食材が豊富にそろっている。ちなみに大手スーパーやデパートに比べて3~5倍以上の種類がありそうだ。ただ特別お高い商品が並んでいるわけではない。一般より少しだけ高いけれど、その差以上に美味しいとか、全国から集めた今まで見たこともないパッケージやラベルを眺めて、「うーむ、美味しそうだ」と思うのである。以前、カンブリア宮殿というテレビ番組で紹介されてから一層客数も増えている。
お店には、コンシェルジュという商品知識を備えた担当者を配置し、客の求めに応じて、商品の産地や特質、あるいは美味しさを丁寧に説明してくれる。人気のある商品ばかり集めてあるので、片っ端から美味しそうな食材や調味料を使ってみればよいのだが、たくさんの商品の中から、客の好みや価値観、健康状態、生活環境、ライフスタイルに合った商品を選んで薦めてくれるようだ。そこのコミュニケーションがみそなのである。だから、時間を持て余している年配の人たちには重宝されているようだ。
そこのカレー売り場から、今日は、「北野セレクション=大人のためのビーフカレー」を紹介したい。北野セレクションとは、メーカーと共同で開発・製造・販売を手掛けるプライベートブランドで、自分たちの価値観の中で考えつくした商品なのである。また、「際立つ美味しさを提供し、さらに安心・安全が保たれている」と思ってもらえる程、拘った雰囲気が出ている。昔の、惣菜屋さんの商売は、店で作って試食をさせ、その場で販売するという、まさにプライベートブランドの歴史でもあったわけだが、ここで言うところの現代のプライベートブランドは、スーパーなどで使われている手法で、一流メーカーに同じものを作らせ、大量に仕入れてコストダウンを図り、高い利益を確保すると言うものである。ユーザー側から観測すると、他の商品に比べ「コスパ」が優れている商品といえる。少しだけ味付けも変わっている。
さて、この「大人のためのビーフカレー」という「全く怪しいネーミングだ」が、これは何を意図しているかといえば、この「大人」とは、冒頭述べたような明らかな「自宅退屈男」である。彼らが美味しいと感じるレシピで作られている。まず、ビーフカレーである根拠は、ビーフの固まりがごろごろ実体があるところにある。そして、昔ながらのリンゴ、バター、ラード等を加えてコクを出す。極めつけは、やはり高度成長時代を反映して「汗カキが美味しく感じる塩分量」である。つまり、少々塩分は多めになっている。まさに、かつての企業戦士には「懐かしい味=わずかにしょっぱい=美味しい」に仕上げている。したがって、「同じ大人」でも、若者が好むスパイシーで辛いカレーではないので注意されたい。
ではこちら
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