2013/08/24

くずきり

    今日のように蒸暑い日には、朝から冷蔵庫に涼しげな甘いものを捜すことがある。それは、アイスでもなく氷菓でもない。意外かもしれないが、冷えた缶詰なのである。「井村屋の葛(くず)小豆」といって、葛を固めたものの中に、小豆の甘納豆を散りばめた冷甘味で、その風景がいかにも涼しげなのである。葛そのものは、寒根葛(かんねかづら)の根から取れる澱粉から作られ、半透明に固められたものである。葛切りや葛餅などの原料として知られているが、葛粉は良質の澱粉なので、昔は、安価に栄養を取るには優れた食材と言われてきた。

  それにしても、我々は、幼い時から具体的な由来や効能を知らずに、いつも決められた時期にそれを食べさせられることがあった。もっとも、その由来を知らずとも、形や大きさ、そして食感などを覚えてしまう。そして、「それが一生を通じて、昔の父や母あるいは祖母の記憶と一緒に閉じ込められ、思い出多き味」になるのである。それが季節感であったり、幼い時の記憶であったり、家族の思い出であったり、様々だが、ついそんな食感を口にしたいと思うことがある。葛は、そんな日本の伝統菓子素材の1つと言えるのではないだろうか。

  葛を使った商品は、最新の創作技術で再現され、一般的な新しいデザートとして市場に出回ることもある。しかし、新しい食材と組み合わせた葛商品でも、老舗の和菓子屋でないと購入するのに納得できないかもしれない。それは、葛商品の自己認識が邪魔をして、組み合わされる食材はもとより、器の形や包装紙にも歴史を感じさせる「古き良き和への回帰」が似合うと思い込んでいるからに他ならない。さらに、加えて、葛の印象と言うか、それ自体への、古く家族の記憶や思い入れを大切にしたい気持ちが、邪魔をするかもしれない。それ程こだわらなくても、甘みや酸味と自然に組み合わせ、いかにも澱粉を固めた食感豊かな食べ心地が必要なのである。

  そんな葛自体に格別に愛着があるわけではないのだけれど、ちょっと変わった葛商品があれば、口にしてみたいと思うのは自然なことだ。今日買ってきたのは、柚子レモンと葛きり、甘夏と葛きりのい生菓子2種である。生菓子と言っても、柚子レモンとか甘夏のジュースで満たされた、さっぱり清涼感漂う葛きりで、新しい美味しさと言える。価格は200円/1個。最初から最後までやや酸味の強いお味で、比較的に葛の食感は薄い。もう少し葛の大きさを工夫してもいいと思うが、しばらく間隔をおいて「忘れかけたころ再び戴きたい」逸品になっている。
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