「ああ、やっぱり美味しいわ」と、無造作に置かれた一杯のうどんに1人で舌鼓を打った。余所者が駅前にある喫茶店で、幼い時から食べ慣れた「共通するお味」と遭遇するのは、理屈では珍しい事ではないのだが、想定外の喜びに心が満ち溢れてしまった。ここは、阪和線の和泉砂川駅である。まさに、意外な場所で古い親友にあったような気分なのである。うどんだから、咽越しはつるっと短かったが、余韻はいつまでも続き、車窓を眺めながら天王寺まで大昔のことをあれこれと思い出していた。
古くからその地域で食べ慣れたお味は、無条件で「美味しい部類」に入るし、周囲も納得してくれる。それはもう、その地域の人達にとっては当たり前の事で、改めて「美味しい」と口にする事もない。その地域と言っても、ここでは範囲は広く、高松、大阪、兵庫あるいはそれ以上の範囲に及び、微妙にお味は違うにしても、古くは「瀬戸内海で獲れた煮干し」を使って作られた出汁には、共通性があるし、歴史が誘う懐かしい風味が漂ってくる。そんな背景から、今日の商品については、「これは個人の感想です」と補足をしなくても良いような気がする。
お出汁の基本は、鰹節、けづり節、煮干し、昆布、椎茸等を使うが、これを手始めに食材に合わせて調味混合するのは、素人にとっては極めて難度の高い作業である。つまり、家庭で作られる和食の味の基本は、その環境で育まれた調味材と調理方法によって継承されてきた。そのため、関西から東京へ出てきた人にとっては、使いこなす事の出来ない程の醤油の辛さと濃さに、閉口される事も少なくない筈だ。それは、日清食品のどん兵衛(うどん)の出汁も関西風出汁とわざわざ表記して別個の商品を用意するくらい慎重に扱われる(どん兵衛2種 2014/02/18にて紹介)。また、セブンイレブンも最近は、地域に特化した限定商品を増やして味付けを変えている。
前置きが長くなったが、今日の主役は、良く出来たヒガシマルの「うどんのつゆ」である。この中央にある小さなパックを使えば、冷たいぶっかけうどんから、冷やしたぬき蕎麦、冷奴、そうめん、和風パスタ、親子丼、かつ丼、天ぷらのてんつゆ、出汁を使ったお茶漬け等、何でもおいしく戴けるし、煮物などに隠し味に使えば、関西風高級料亭の味付けに仕上げることができる。まさに「万能な和風出汁の素」とも言える。もちろん、前の日から素材を水出しで用意するような手間は一切かからない。食材の上から「ぶっかけ」るだけである。しかも、1袋4カップ入り。価格は1カップ(写真中央)68円程度。関西出身の方には是非にでもお勧めしたい。