2014/06/25

お鍋で食べる昆布

  毎日のように使われてきた「出汁昆布」は、昔から意外に高価な物だった。なのに、それは出汁を採ってしまうと捨てられる。勿論、厚みのある上質の昆布は、もったいないので捨てずに、後で佃煮や煮物等に使うこともある。前夜から鍋に水を張り、昆布やいりこ、さらに乾燥帆立等を水に浸けて、それらに含まれている旨味やミネラルを抽出する。これが和食料理の基本となる出汁である。翌朝それに、豆腐、なめこ、などの具を入れて火を通し、味噌を溶き入れて、ねぎ等を散らして味噌汁に仕上げられる。上質昆布として有名なのは北海道の 7~9月に採取された昆布で、乾燥し、長さをそろえて結束し、袋に詰めて出荷される。このような良質の昆布を入手するには、老舗の乾物屋へ行くと良い。

   現在は、このような手間を掛けるのは「田舎のおばあちゃん」ぐらいで、都会のお母さんとしては、出汁に使う素材を分類すると大きく2つに分けられる。比較的古典的な方法とも言える、やや高価な「出汁の抽出パック」か、あるいは、割安で迅速にできる「スティック状の顆粒の出汁の素」があり、使い分けられている。前者の「出汁の抽出パック」は、昆布や椎茸の細かく裁断した物、さらに、焼きあご、鰹節、鯖節等の乾燥チップに醤油粉末等を入れて味を調整したものが袋に詰めてある。いわゆる自然の乾燥素材なので、各素材の馴染みが良く、沸騰した鍋に投入して2~3分で美味しい出汁が出来上がる。一方、「顆粒の出汁の素」は、原材料別に、昆布、鰹、あご出汁などが顆粒状でスティックに入ったもの。これらは、沸騰した鍋に投入した瞬間から出汁に早変わりする。さすがに単品だと旨味が単調で寂しいので、やはり数種類の出汁の素を合わせて深みを追求する。

  今日は、「お鍋で食べる昆布」なる物を買ってきた。昆布を長手方向に細かくカットし、1人前づつ束ねたものが5束入っている。出汁にうるさい人たちにとっては、きっと、「こんなの欲しかった」としみじみ思うに違いない。また、手に取ってみるだけで次々と使い方のアイデアが広がりそうだ。説明書を読むと、その製造法に再び感心する。それは、「北海道産真昆布に、鰹節、干し海老、帆立干し貝柱、椎茸から抽出した旨味のエキスをまとわせ、極細カットされたも」のとある。それによって、簡単に素早く濃厚な「出汁」が採れるようだ。最大の特徴は、極細カットにあり、お湯との接触面積が2倍以上になっていることで、「付け加えられた旨味や昆布の養分が素早く溶け出す」ところにある。さらに昆布本体から溶け出す「ぬるぬるとした粘りは、食物繊維」なので逃さず体に採り込むのがよい。

  す早く本格的な出汁が採れる、つまり、古典的な出汁の抽出方法なのに、スティック状の顆粒の出汁の素のように、迅速に出汁が採れる。これによって、味噌汁、湯豆腐、おでん等はもとより、例えば、醤油容器に、入る長さに切って浸けると数時間で醤油昆布ができる。そのまま、さらに短く裁断して、炊き込みご飯のベースになる昆布出汁として使える、うどんや麺類の出汁に追加で加えると本格的な味に仕上がるし、さらに細かく数ミリ程度にハサミ(昆布の固さからニッパーが良い)で裁断しながら漬物に掛けると旨味が生きる。まさに使い方は自由自在である。抽出時間の目安は沸騰のお湯で5分程度。出汁や養分を放出した後の昆布の姿は、4倍に大きくなり、柔らかさも増してそのまま美味しく戴くことが出きる。この「お鍋で食べる昆布」によって昆布の使い方も幅広くなるし、本格的な出汁が身近で簡単なものになりそうだ。
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