2014/06/06

ブランデーどら焼き

  最近、甘党の肩身は狭い。特に我々の年齢になると、少しだけ美味しい物を食べるくらいしか楽しみはない。にもかかわらず、周囲からは糖尿病予備軍という、まるで戦士のような汚名を着せられて、周囲360度から脅されている。そこまで追い詰められると、既に反撃をする元気もなくなり、じわじわと納得せざる終えなくなる。しかし、そこで周囲の声に屈してはならない。まるでステルス戦闘機のように、誰にも見えないように対処することが期待される。それは、僅かな空気の動きも見落とさず、甘い物をパクッと素早く口にし、知らん顔をして、顔を動かさずに砕いて胃へ送り込む。間違っても「美味しかったとか、旨かった」などと、尻尾を出してはならない。

  落語の小話ではないが、いつもは、聞かれたら「甘い物は嫌い」だとか、「甘い物は体が受け付けなくなった」とか、周囲を煙に巻くのは常套手段である。思い出したように、「あそこの鯛焼きは、特別美味しかった」などと話しかけられても、引っ掛からず「鯛の塩焼き?」とか言って呆けて見せる必要もある。しかし、何時か、何処かで体からボロが染み出る可能性はある。それを抑えるためには、平素から隠れて「筋肉を動かすハードな運動」をしておく必要もあるし、野菜に含まれる「食物繊維」の大量摂取の必要もある。時には、プアール茶や黒烏龍茶も必要だ。何かにつけて、ボロが数値で出ないような工夫が必要になる。

  美味しい物を、美味しく戴くには、大して「魅力のない甘味」を口にすることは、日頃から避けるように心がけておきたい。特に、平素から血糖値が高目の人は、和菓子など上品な甘さに対して、少々では「感動する」とは思えないが、そのような人に限って、甘い物は好物であったりするわけで、僅かな美味しさの「違いそのもの」には敏感かもしれない。しかし、いずれにしても、食に対する原則は空腹にあり、常に空腹に自分を置き、その状態に慣れておくようにするのが良い。この状態は、血糖値が下がっている。そして、甘味を戴く前には、急激に血糖値を上げることのないよう、先に抹茶などを飲むようにしたい。さらに、食事の味付けには塩味、甘味、酸味、苦味、辛味などがバランス良い状態を保つようにしたい。そうすることで満腹センサーが正しく動作する。

  そんな苦労をしてでも食べる価値があるのが、この「ブランデーどら焼き」なのである。口にしたら、きっと「旨い、もう、たまんないす~」と漏らすかもしれない。いや、ひょっとすると食事をたっぷり済ませた後でも、あるいは血糖値が高い状態でも、ぜひ別腹に入れたいと願うに違いない。そんな美味しさが滲み出ているのである。元々、どら焼き自体を好きな人は多いはずだが、その餡子にブランデーを加えることで、得も言われぬ餡子の甘さが、それを囲む生地に浸潤して(ここが重要)、甘さと香りに格別な美味しさを加えているのである。素朴などら焼きでも、滲み出る餡子とブランデーの香りで、かつてない「美味しさ」に仕上げた逸品と言えよう。
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