日本は初戦で負けてしまい、落胆して「観戦後は寝込んでしまった」という人も少なくないだろう。イングランドもスペインも初戦を落としている。まだ大丈夫だと、低レベルの比較をするつもりはないが、いずれにしても、まだ2試合残っているのだから、自信を取り戻して頑張ってほしい。しかし、振り返ってみても惜しいのは、同じパターンでしかも「2分間で2点」取られてしまったことに尽きる。こういう形で逆転されるケースは極めて珍しい。その他の時間帯では、いつもより、幾つかの悪い条件が重なったにもかかわらず、頑張りが効いて、逆に1点差に抑えられたところに「望みを先へ繋げた」ともとれる。元々FIFAランキングだけで比較すれば、日本46位、コートジボワール23位、ギリシャ12位、コロンビア8位なので、いずれも、まともに「戦って勝ち」に持ち込むのは難しいし、次々と試合を重ねるごとに難しくなると考えるのが一般的だ。
しかし、環境(=天候、気温、気圧、試合時間)、選手の体調、経験などによっては、ランキングが崩される可能性は十分ありうる。そういう専門家も少なくない。つまり、日本は自国の優れた環境で試合をするなら、今なら引っ繰り返せる可能性も十分あると例えられる。それを今回の試合に当てはめると、天候は雨、時々曇りとなり、暑く湿度も高い。そこでは、ボールを細かく動かして攻撃に展開するサッカーは、ボールが芝の上を走りにくいので、ボールを奪われやすいし、それによって体力を大きく消耗する。スペインが苦労したのもそのためだ。一方、技術よりも身体能力で圧倒的に強みのあるコートジボワールは、それでも初戦と言うことに加えて、日本の守備の固さに、攻撃の術を欠いていた。しかし、攻撃の手を緩めることはなかった。
日本のチームをみると、我々の知る攻撃メンバーに欠けていたものがある。初戦を「経験や実績」よりも「体力、あるいは守備」に重点が置かれたとみるべきなのだろう。でも、そこまでチームは器用ではない。これが「自分達のサッカーが出来なかった」と言われる由縁である。攻撃の起点、つまり、今までFWへボールを配給してきたのは遠藤である。そういう彼の経験が最初から無視されたと言っても過言ではない。「日本のサッカーはチームで戦い、良く統率されている」と言われる。それは、裏を返せばサッカーを自ら創造するのが苦手ということでもある。だから、練習は舞台稽古と同じで、殆どが「監督の演出」なのである。しかし、監督が演出できるパターンには限度がある。そこにチームの中に経験豊富な司令塔が必要で、試合中はチャンスメーカーとして進行を任される。ただ、FWの足が止まってから司令塔を投入しても遅いし、FWを入れ替えても、2列目と連携がなくバランスを崩すだけだった。いつも感じるが、やはり香川が臆病になっていたように見受けられる。既に後半は、チームとして体力を失い、チームとしての形を崩し始めていたといえる。
一方でベンチを温めていた経験豊富なドログバは、冷静にゲームを見守って分析していた。投入されてすぐにそれに手をつける。ぽっかりと空いた右サイドからの攻撃である。その結果が同じパターンでしかも「2分間で2点」の場面を生む。弱点は、普通、失点に繋がる攻撃を繰り返されても、すぐには修正できない。さらに、2分は短すぎた。普通、サラリーマンでも同じミスは許されないから、中年の観戦者には「なんだそれは、VTRか!」とがっくりきた人も多かったことだろう。それでも、攻撃中心のチームと自負するなら、次に繋げるために、サポータを含めて「そのメンバーで負けたなら、それは納得できる」と思わせるようなメンバーで戦ってもらいたい。今回は、明らかに監督の采配ミスであり、次も同じ結果になるようだと、監督として責任を問われる。