2014/06/27

POMPEII / ノア 約束の舟

  「 ポンペイなら知っているよ」と、誰もが口にするほど有名な古代都市(世界遺産)だが、そんな詳しい人こそ見逃してはならない映画がこの「POMPEII 」と言えよう。あのバイオハザードで有名なポール・W・S・アンダーソン監督の最新作で、最初から最後まで、一瞬たりとも目が離せない大型娯楽作品になっている。勿論、壮大な自然の営みの再現は、CG映像技術が自然科学を上回ったといえるほど、リアルな映像に圧倒される。製作者の拘りかもしれないが、上空からヘリで撮影したような映像では、CGがこれほど必然性の高い使われ方をしていることに感心させられる。そして、少々余談になるが「24 のジャックバウワー」がローマの特使として登場する。そこで「こいつは死なない!」だろうと思いつつ、最後は「あーあ」と、つい笑いがこみあげてくるが、キャスティング自体にファンとしては少々違和感が拭えない。

  優れた臨場感として、誰もが満足するに違いないにしても、ただ、火山噴火の検証というような視点で観ると、ややオーバーな表現と取れる部分や、津波などに歴史上の事実と噛み合わない部分もあるかも知れない。ストーリーは単純明快の作りで、定番とも言える、ロマンス、友情、戦士、決闘、虐殺、奴隷、賄賂、それに、大自然の地域特殊性として、地震、噴火、大津波、逃げる大衆等が組み立てられ、次から次へと展開するので、誰が生き残れるのか、どうすれば逃げ切れるのか、心臓がバクバク、血圧も上がってくる感じで、所詮、作り物だと思いながらも、さすがに根拠のある作り物のせいか、怖さの中に身を投じてしまい、体が長時間強張って疲れてしまった。音楽はメロディックなもので馴染みやすく、オーケストレーションも素晴らしい。観終わっても虚脱感に襲われ、こんなに体に堪える映画も久々だと感じる。少々オーバーかもしれないが、劇場入場前に食べた物が全く消化されていなかった程だ。


それに対して、難解で分かりにくい映画が「ノア 約束の舟」になる。聖書の文章に不明な部分があり、前後から話のつじつまを合わせようと、何かと理屈を考えて埋めようとする行為は、その解釈をめぐって自由奔放であってよい。むしろ「作者自身の都合で解釈」をしっかり映像で説明すべきである。そこに、監督の感性が脈々と注ぎ込まれ、「選ばれた人間としての愚かさ」を表現して欲しいと思うのである。そこに人の本質を芸術性が包み込むような自由度のある表現が観る者を魅了する。しかし、いくら自由にと期待しながらも、「岩が人型となって動き回るのは如何なものか!」と愕然としてしまう。そこは、もっと明確に時代考証感と抽象映像感を使い分けることで、映画作品としての品位を高められると思うのだが、少々がっかりさせられた。また、私のような宗教心の薄い者には、そこに監督の自己満足の押しつけのように観えてしまう。所詮、お天道様の童話かい?と思う程度なのである。しかし、劇場内では涙する年配のご婦人などもいらして、そこに私の考えの及ばない神聖なる思想が流れていたのかもしれない。


  60歳過ぎのおっさんの感想だからそれなりだけど、この2つの作品は対照的である。既に古代都市の悲劇として広く知られている話だから、改めて楽しめる要素はないと勝手に見逃しそうな「POMPEII 」と、一方で、興味津々で壮大な映像技術で表現する「ノア 約束の舟」の予告編を眺めて、漠然として前知識も少なく、ひょっとしたら「崇高なるノアの解釈と神に対する服従を観ながら」人類創生の意味合いを、自分に対する教訓の1つとして「映像から何らか学び取れるに違いない」と期待する向きも強かった。それだけタイトルに魅かれるため、その期待に対する落胆も大きいという危険性をはらんでいる。しかし、実際の社会はもっと愚かなことが日常行われていて、それには理解を超えたものも少なくない。つまり、どのような向き合い方をするかによって、この作品自体の理解度も異なってくる筈だ。「POMPEII 」は屈託なく楽しめる作品だが、「ノア 約束の舟」は、作品を観終わって「それはいったい何!と」考えさせられる作品であった。

参考1:「ポンペイ」
http://pompeii.gaga.ne.jp/

参考2:「ノア約束の舟」 
http://www.noah-movie.jp/